第8回山田風太郎賞の選考会が23日、東京都内にて行われ、池上永一さんの『ヒストリア』(KADOKAWA)の受賞が発表された。
受賞作『ヒストリア』は、第二次世界大戦の沖縄上陸作戦で家族を失った少女が、移民として未開拓の地・ボリビアへ渡り、厳しい生活を強いられる波乱に満ちた生涯を描く壮大な物語。
選考委員を務めた京極夏彦さんは「圧倒的なスケール感と、膨大な情報量を読み物としてさばいていく手並みは見事なもので、その点において図抜けていたことは間違いない」と評し、「沖縄ではまだ戦争が続いているのだ、というメッセージもきちんと伝わってきた」と述べた。
また、文芸評論家の末國善己さんは、角川春樹事務所のPR誌「ランティエ」(2017年11月号)で、歴史小説や細腕繁盛記、国際謀略小説としても楽しめると評し、《沖縄の怨念の深さを突き付けるラスト一行には、驚愕するはず》と同作について触れている。
( https://www.bookbang.jp/review/article/539267 )
池上永一さんは1970年沖縄県那覇市生まれ。早稲田大学在学中に「バガージマヌパナス」で第6回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。1998年『風車祭(カジマヤー)』が第118回直木賞候補となる。以後、『レキオス』や『シャングリ・ラ』などのSF作品や『テンペスト』『黙示録』などの沖縄を舞台にした歴史時代作品を発表している。
山田風太郎賞は、故山田風太郎の独創的な作品群と作家的姿勢への敬意を礎に、有望な作家の作品を発掘顕彰するために創設された。長編および短編の文芸作品の中より最も面白いと評価された作品に贈られる。第8回選考委員は、奥泉光、京極夏彦、筒井康隆、林真理子、夢枕獏(敬称略・五十音順)が担当した。
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昨年は、グリコ・森永事件を題材のモチーフとした塩田武士さんの『罪の声』が受賞。過去には貴志祐介さんの『悪の教典』(第1回)、冲方丁さんの『光圀伝』(第3回)、今年7月に『月の満ち欠け』で第157回直木賞受賞した佐藤正午さんの『鳩の撃退法』(第6回)などが受賞している。
第8回の候補作品は以下のとおり。
『ヒストリア』池上永一[著]KADOKAWA
『敵の名は、宮本武蔵』木下昌輝[著]KADOKAWA
『腐れ梅』澤田瞳子[著]集英社
『夜行』森見登美彦[著]小学館
『盤上の向日葵』柚月裕子[著]中央公論新社
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