【手帖】「翻訳者の意義、認められた」「もっと大きな仕事を」

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 第6回早稲田大学坪内逍遙大賞(隔年顕彰)の授賞式が6日、東京都内で開かれ、大賞に選ばれた翻訳家の柴田元幸さん(63)と、奨励賞に決まったアメリカ出身の詩人、アーサー・ビナードさん(50)がそれぞれ喜びや抱負を語った。

 大賞を受けた柴田さんは、それまでは日本であまり知られていなかったポール・オースターやスティーヴン・ミルハウザーといった現代のアメリカ作家たちを優れた邦訳とともに積極的に紹介してきた。近年は文芸誌「モンキービジネス」「MONKEY」などの責任編集者も務め、日米の作家の相互交流にも力を入れている。

 マイクの前に立った柴田さんは「第1回(受賞者)の村上春樹さんをはじめ、毎回素晴らしい創作者の方が受賞している賞。創作をしていない自分が受賞したことで、日本で翻訳者の存在意義がいかに認められているかを実感した。すべての翻訳者を代表して受賞したつもりでいます」とスピーチ。さらに「代表して賞金をもらったのだから、編集者や翻訳者に『おごれ』といわれたら、喜んでおごります」と語り、会場を沸かせた。

 一方、奨励賞に選ばれたビナードさんは米国の大学で英文学を学んでいるときに、偶然触れた日本語の面白さに魅了され、大学卒業後に単身で来日。平成13年には最初の詩集『釣り上げては』(思潮社)で中原中也賞を受けた。その後もエッセーや絵本など幅広いジャンルで活躍している。

 「道を踏み外して日本に来ちゃって、ずっと日本語と英語を行ったり来たりしてきました」とユーモア交じりに自らの歩みを振り返ったビナードさん。シェークスピアの全集刊行に力を注いだ坪内逍遙のスケールの大きな仕事に敬意を評した上で、「坪内逍遙の名前を自分の略歴の中に組み込む、ということは『もっと大きな仕事をしなさい』という意味だと思う。やるべきものがたくさんあるので取り組んでいきたい」と今後の健筆を誓った。

産経新聞
2017年11月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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