『硝子の探偵と消えた白バイ』
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細部に至るまで本格愛が宿る
[レビュアー] 図書新聞
作家の深水黎一郎が本書解説でこう述べている。「本格ミステリーは、序盤に魅力的な謎が呈示されなければならない。それが約束事だ。そしてその謎は論理的に解かれなければならない」。小島正樹ほど、この定義に淫している作家はいない。一瞬にして白バイが消えるという絶対にあり得ないことが起きた。このあまりに「魅力的な謎」を入り口に、不可解な殺人事件が連続する。解明に乗り出すのは、自称天才探偵の朝倉と助手の小太郎。二人のキャラクター造型がとにかく素晴らしい。いわゆる「ホームズとワトソン」ものかと思いきや、「硝子の」という形容詞が予想外の威力を発揮する展開にびっくり。細部に至るまで、著者の並々ならぬ本格愛が宿る一作だ。続編『硝子の探偵と銀の密室』も要チェック!(8・9刊、三三八頁・本体七〇〇円・講談社文庫)