【児童書】『やねの上の乳歯ちゃん』鳥居みゆき作・絵
[レビュアー] 櫛田寿宏
■人気芸人の世界観を絵に
子供の抜けた乳歯を擬人化し、下の歯は屋根の上に投げるという昔からの習慣に従うことから始まる旅の物語。歯が抜ける=大人になる機会を、乳歯の視点からとらえている。主人公の「乳歯ちゃん」は、ほうり出された先の屋根の上で起きている現実にショックを受け、「ここにいたら ぼくは だめになる」と感じる。そして、“故郷”へ戻ることを決意するが、たどりつくことはできるのか。
ちょっと「毒」のある、きわどい芸風で人気のお笑い芸人が、ユニークな世界観を絵にしている。それだけに、単にかわいらしいだけでなく、有名人のスキャンダルを連想させる絵など大人にしか分からない、少しダークな仕掛けやギャグが随所にちりばめられている。
鳥居さんは「乳歯が抜けて永久歯が生えるのは体の成長ですが、このときの心の成長はもっと大切です。乳歯の抜ける子供から永久歯の抜けた方々まで、幅広い世代に読んでほしい。乳歯がテーマですが、永久保存版です」と話している。(文響社・1400円+税)
櫛田寿宏