作家の角田光代さんと夫でミュージシャンの河野丈洋さん初の共著、『もう一杯だけ飲んで帰ろう。』の刊行記念イベントが、12月7日神楽坂のla kaguで開催された。「誰とどこで飲むかということが人生の重要事項」だという2人が、飲みに行くお店や酒場のこと、酒好き夫婦の幸せについて、レモンサワーへの熱い想いなどを語った。
■中央線が好きすぎて
夫婦初の共著である『もう一杯だけ飲んで帰ろう。』は、2人で一緒に行ったお店をそれぞれの視点で綴ったエッセイ集である。2人が住んでいるエリアは飲み屋が多いので、まずは行き慣れたお店から選んでいった。しかし、そうするとどうしても地元に偏ってしまう。違う場所でお店を探そうとするものの、「どうしても私たちは中央線から出ようとしない」(角田さん)。2人の「中央線愛」ゆえに、本書には中央線沿線のお店が多く取り上げられていると、会場のお客さんも納得した様子だった。
■レモンサワーを馬鹿にするな!
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- もう一杯だけ飲んで帰ろう。
- 価格:1,430円(税込)
角田さんは毎日最初の1杯目はレモンサワーを注文し、自らを「レモンサワーの代名詞」と表現するほどレモンサワーを愛している。地元のよく行くお店では、入店と同時に「レモンサワーですね!」と自動的に注文が入るほど。しかし、都心のおしゃれなお店でレモンサワーを注文した際、店員に小馬鹿にしたように笑われ、「うちはちょっとそういうものは……」と言われることがある。なぜ普通に「レモンサワーはないです」と言えないのか、なぜレモンサワーを馬鹿にするような態度をするのか、レモンサワーへの深い愛と腹が立った経験を2分間ノンストップで熱く語った。
■連載中に転機が……
飲んでいる場での話題は、お互いの仕事についてが8割だという2人だが、河野さんは3年間の連載中に所属していたバンドGOING UNDER GROUNDを脱退し、ソロ活動を始めるという大きな転機があった。映画やドラマ、舞台音楽制作など今までとはまったく違う仕事を始めた河野さんにとっては、仕事や環境が大きく変わった不安や戸惑いの中でも、一緒に飲む角田さんや友人たちとの会話や、定期的に友人たちと会って飲む場があることで助けられたと言う。
身近でその変化を見ていた角田さんも本書を読み返してみたら、原稿には身辺の変化はあまり出ていないけれども、実はその大きな転機がこの本の裏テーマになっていることを発見したと語った。
会場では来場者へのアルコール類の提供もあり、登壇者も会場もほろ酔い加減のあたたかな雰囲気で一体となっていた。
イベントのエンディングでは河野さんが、この日のために作った「もう一杯だけ飲んで帰ろう。」という本書と同タイトルの歌を生演奏で初披露し、大盛り上がりの中イベントはお開きとなった。
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