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- 続ける脳
- 価格:880円(税込)
2018年、はやくも1月の後半。目標を決めた当初はやる気満々でも、気づけばいつものダラダラ癖が出てきた…という人も多いのでは? そこで今回は、がんばらなくても目標設定できる最新の「脳の活用法」を紹介します。「目標を他人にいうとかなう」はウソだった?? SB新書『続ける脳』(茂木健一郎・著)から気になる箇所をピックアップしてみましょう。
目標をいってはいけない
目標を公表するのは、なぜ効果がないのでしょうか。
実は目標とは、他人にいうとかないづらくなると研究で明らかにされているのです。
アメリカの起業家、デレク・シヴァーズのTEDスピーチで有名になった、心理実験があります。
人を集めて45分間、目標に向かう作業をしてもらいます。このとき、半分の人には目標を宣言してから作業に取り組むように指示し、残りの半分の人には何もいわずに作業に取り組むよう指示しました。
実験の結果、最初に目標を宣言しなかった人たちは、与えられた45分間という時間を最後まで使い切ったのち、「自分の目標達成には努力が足りない」という感想を持つ傾向があったのに対し、最初に宣言した人たちは、45分を使い切らず早々に作業を切り上げ、自分の成果に簡単に満足してしまう傾向がありました。
目標を他人に宣言すると、「目標に近づいた気分」になってしまうと考えられるのです。実際には、公言するだけでは近づいていないのですが、達成した気分になり、努力を怠ってしまいます。
かくいう私も、若い頃はファミレスで夢や希望を、さんざん語り合ったものでした。あるとき、イラストレーターを目指していた友人と、一緒に本をつくろうと盛り上がったことがあります。
「『こっぱみじんこ』というキャラクターをつくったら面白いのではないか!」
「なるほど! これはイケるんじゃないか!」
しかし、もちろん、実現することはありませんでした。
「そのアイデア、面白い!」
「いいね!」
といい合うと、夢の実現に近づくようですが、正反対だったのです。
人間は言葉にすると満足してしまう。「こっぱみじんこ」になったのは、私たちの夢のほうでした。
内に秘めると力に変わる
2017年に長編小説『騎士団長殺し』(新潮社)を発表された村上春樹さん。1979年に『風の歌を聴け』でデビューされてから、定期的に長編小説を発表し続けています。しかも『騎士団長殺し』は、千ページを超える長編。村上春樹さんはランニングを日課にされていて、まさに継続=グリットの人です。
村上春樹さんのグリットについて、印象的な話があります。
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(文藝春秋)を出版したときのことです。村上さんは、ある日、文藝春秋の社長と会食をされていたそうです。村上さんはその席で突然、「こんなのを書いてみたのだけど、興味はありますか?」とUSBを渡しました。このデータこそが小説の完成原稿だったのです。
これはよく考えてみるとすごいことです。
村上さんは、作品を最後まで書いてから、いきなり人に渡すのです。
小説を書くには長い時間がかかります。作品を書く長い時間の中で、村上さんはひたすら書いているだけで、周囲から反応をもらうという満足を得ていないのです。一人で書いていたら不安になるから、「いいですね」「面白いですね」という編集者からの励ましや、「こんなふうにしてみましょう!」という助言を求めたくなります。
しかし村上さんは、そういった満足を得ずに一人で最後まで書き上げて、編集者に渡す。そのときはじめて、やっと一つの満足が得られるのです。村上春樹さんは「長い孤独な時間を耐えられる人」といえるでしょう。
続ける力をつけるためには、不安のエネルギーをため込むことも必要です。
村上さんとは対照的に、ツイッターなどのSNSでは、自分がいかに忙しいかアピールする人を見かけます。
「これから企画会議だ」
「まだこんなに難しい仕事をやっている」
「たった2時間しか寝てない」……。
彼らは、誰かにつらい現状を知ってもらい、不安を解消しています。
しかし、本当は「だめかもしれない」と不安に思うからこそ、「もうちょっと調べてみよう」「もうちょっとがんばってみよう」というパワーが生まれるのです。忙しさを小出しにして、他人に慰められ、満足を得てしまうと、完成したときに解消されるべきだった不安のエネルギーが、そがれてしまいます。それは完成品のエネルギーを減らします。不安のエネルギーを、作品に向ける意識を持つだけで、仕事の質はとたんに向上するはずです。
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