インパルス板倉 直木賞作家に自著を褒められ、「相方の事故で、たっぷり執筆時間がとれたおかげ」

イベントレポート

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 お笑いコンビ「インパルス」の板倉俊之さん(40)と作家の道尾秀介さん(42)がお互いの新著の刊行を記念して2月26日、神楽坂ラカグにてトークイベントを開催した。

5年ぶりの顔合わせ「インパルス」の板倉俊之さん(40)と作家の道尾秀介さんは5年ぶりの顔合わせ

 2月22日に発売された板倉さんの『月の炎』(新潮社刊)は、急転直下の展開に感涙必至のハートウォーミング・ミステリー。一方、道尾さんの最新刊『風神の手』(朝日新聞出版)も、1月に発売されるやいなや、「すべてのエピソードが伏線」「ひとつも無駄がない」と評判となっている。

 出会いの切っ掛けから、お互いの創作作法まで、滅多に聞けない内幕話の連続に、超満員の観客は熱心に聞き入っていた。

■始まりは5年前

 ずっと道尾作品の大ファンだった板倉さんは、5年前、『蟻地獄』が刊行されたとき、是非読んで欲しいと、当時一面識もなかった道尾さんに本を送ったという。

「ほぼ毎日のように本をいただくので、なかなか全部は読めない」、という道尾さんだが、何気なく読み始めた『蟻地獄』がやめられず、大事な会合に遅刻するほどのめり込んでしまったと告白。そして、担当編集者に『蟻地獄』がいかに面白いかを語ると、その担当者もすぐに読んで驚愕。板倉さんに連絡を取り、新作を依頼したという経緯が明かされた。

 この日の対談は、2人にとって5年ぶり2度目の顔合わせとなった。

「喋りたいことがいっぱいあったんですよ」と、楽しそうに口を開く道尾さんに、「道尾さんが『蟻地獄』を褒めてくれなかったら、今こうして新潮社で本は出ていない」と答える板倉さんも、とても嬉しそうだった。

■最初はまったく別の話だった

 ハート・ウォーミング・ミステリーと評される『月の炎』だが、最初はまったく別の「胸くそ悪くなるような話」だったという。板倉さんは書いているうちに自分で嫌になってきて、後半は「全部捨てて書き直した」のだそうだ。

「では、かなり時間がかかったのでは?」という道尾さんの問いに、板倉さんは、「(相方の)交通事故のおかげで、執筆時間と直しの時間がたっぷりとれましたから」と苦笑い。会場の笑いを誘っていた。

 道尾さんは、「一度書いたものを捨てるのはなかなかできない。英語では、一度書いたものを捨てるのをkill your darlingと言う」くらいに、覚悟のいることだと説明した後、自らの経験から「一度ダメだと思って捨てた後、それが新しい別の作品になるというのは、必勝パターンですよ」と、板倉さんの作品に改めて太鼓判を押した。

■小説は、省略の芸術

 また、道尾さんは「小説は、省略の芸術」で、「書きすぎないことが大事」とも語る。「長い年月を描く場合、すべての出来事を書けるわけではない。子供から大人になるまでの時間は、小説では書かれていないけれど、色々な出来事があったはず。登場人物に一貫性を持たせ、その間の年月を感じさせることが大事。余白というのは、要白でもあって、必要なもの。全部を書くのではなく、省略して本物以上のことを伝えるのが文章の力」だと、創作の秘密の一端を明かした。

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■小説とコントは違う? それとも似てる?

  小説とコントの違いを聞かれた板倉さんは、「小説は直しが利かない」という点を一番に挙げた。コントは、「お客さんの反応を見ながら少しずつ手直しできるが、小説は一回発表してしまったら、読んだ人の反応に応じて手直しする、というようなことはできない」そこが大きな違いだという。

「一度、沢山の人に集まってもらって一斉に本を読んでもらい、どこでどんな反応をするのかをこっそり見てみたい。食事とかは出すから(笑)」と言う板倉さんに、「それは是非見てみたいなあ」と応じる道尾さん。

 また板倉さんは、コントにおいては、「人間模様を切り取るのが好きで、笑いが取れると分かっていても、関係ないことは書かない。そして、コントにはベストの長さがあって、15分のコントは、どうやっても5分にはできない」とも語る。

 小説とコントという一見別のジャンルでも、図らずも2人の創作姿勢は共通していた。

「好きな作家は板倉俊之」と語る道尾さんと、道尾さんを「師匠」と呼ぶ板倉さん。本当にお互いの作品が好きで、小説が好きで、小説について語るのが好きなんだな、と感じられる対話は、イベント終了後の打ち上げでも続けられたという。

 道尾さんはイベント後に自身のTwitterで「板倉さんとのトークイベントが最高に楽しかった。」と感想を嬉しそうにツイートしている。

Book Bang編集部
2018年3月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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