日本人だって避けては通れない「民族」という問題

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アメリカにおける白人至上主義者と反対派の衝突、中東諸国を揺るがすクルド人問題、ロヒンギャ族難民をめぐる宗教対立……。いま、世界中で起こっている紛争や対立の多くは「民族問題」に根ざしています。そして、かつて人類が経験した戦争や動乱もまた、その多くが民族問題と無関係ではありませんでした。

世界史とは、さまざまな民族が経験した衝突と融合の軌跡であるとも言えます。このような視点から世界史を捉えなおしたのが、新刊『教養として知っておきたい「民族」で読み解く世界史』です。著者、宇山卓栄さんに、同書の読みどころを語ってもらいました。

知らない言語を使う人たち=野蛮人?

かつて、古代ギリシア人は外国人を「バルバロイ」と呼びました。これは「バーバーとわからない言葉を使う人たち」という意味で、野蛮人と訳されます。バルバロイは英語のbarbarous(野蛮な)になります。

今、日本はどこに行っても、中国人や韓国人などの外国人観光客でいっぱいで、「バーバーとわからない言葉」に溢れています。古代ギリシア人が言ったように、たしかに「バーバー」と聞こえますが、それぞれの民族の言葉には独特の響きや雰囲気があります。

私は欧米人にとって、現代のアジアの言葉がどのように「バーバー」と響くのか、その聞こえ方が気になっていたので、イギリス人の友人(英会話教師で女性、30歳代)に尋ねたことがあります。彼女は以下のように答えました。

中国語……speedy (早口)
韓国語……strong (強い)
日本語……gentle (穏和)

私は彼女の返答を聞いた時、「ああ、なるほど、こういうイメージなんだな」と納得しました。また、彼女は、リップサービスかもしれませんが、日本語はアジア言語の中で、「最も美しく優雅に響く」という評価までしてくれました。

各民族の言葉・言語が持つ雰囲気は民族の内面的特質やそのイメージに直結します。言葉が民族の内面イメージを醸成するのか、民族の内面が言葉の雰囲気を形成するのか、どちらが先なのかはわかりませんが、両者に密接な相互依存関係があることは間違いありません。

穏和な日本人が穏和な響きの言葉を話す、穏和な響きの言葉を話す日本人が穏和である、さらに、こうしたことは各民族の「歩き方」、「食べ方」、「装い方」などにも大きく関係し、もちろん、一番大切な「考え方」へと帰着します。民族の文化や社会はこのように形成され、その蓄積物こそが「歴史」と呼ばれるものです。

民族の「雰囲気」はどこからくるのか

中国人や韓国人について、顔や容貌がほとんど日本人と変わらない場合でも、それぞれの民族が内面から醸し出す独特の「雰囲気」というものがあります。

その「雰囲気」によって、我々はパッと見ただけで、彼らを「日本人と違う」と判別できます。そして、その最初に感じた「雰囲気」が、「話し方」や「歩き方」などの彼らの行動パターンと性質上一致することに気付きます。

それぞれの民族が醸し出す「雰囲気」や行動習性は歴史の中で培われたものです。歴史の中で、民族が生きた社会や環境、文化や伝統の記憶は否応なく、民族の遺伝子に刻まれます。そして、それは民族の血統としてのちの世代に受け継がれていきます。

潜在下に流れ続ける民族の「血の記憶」に対し、抵抗したり、粉飾したり、隠蔽したりすることはできません。民族の「血の記憶」は自然かつ必然的に表出されるものであり、それが民族固有の「雰囲気」となって現れるのです。

各民族の持つ「雰囲気」がどこからやって来るのか。その正体を掴み、民族の本当の姿を暴き出したい。このようなことに、真正面から取り組んだ本が『教養として知っておきたい「民族」で読み解く世界史』です。「○○人はどうして~~なの?」とよく思いますね。このような疑問に答える本でもあります。

日本人が苦手な「民族問題」

我々日本人は、「民族」の問題の扱いに慣れていません。日本は基本的に単一民族の歴史を歩んできた国民国家であるために、世界が経験したような民族対立もありませんでした。

昨年末、日本テレビの「笑ってはいけない」でダウンタウンの浜田さんが『ビバリーヒルズ・コップ』のエディー・ マーフィー風の扮装をして、物議を醸しました。外国メディアから人種差別にあたると批判を受けました。

では、逆に、顔を白く塗って白人メイクをしたら、それは人種差別に当たらないのでしょうか。恐らく、こういう問題に、答えはないだろうと思います(ちなみに、エジプト人タレントのフィフィさんは「差別に当たるかどうかは差別の意識を意図的に持ってやっているかどうかで決まる」と発言しておられます)。

いずれにしても、日本人はこういうセンシティブな人種や民族の問題に対し、タブーなしに直視していかねばなりません。

「白人優位主義」、「黒人被支配」、「黄禍論(黄色人種がわざわいをなすとする論)」など、世界の歴史において、民族・人種をめぐる様々な問題が起こりました。本書では、それぞれの民族が触れられたくない「歴史の闇」に斬り込んでいきます。

そのような闇が与えるトラウマが大きければ大きいほど、民族の「血の記憶」もまた大きくそれに左右されます。「歴史の闇」を避けて通ることはできません。

現在、世界中を席巻するナショナリズム、移民・難民問題、民族対立・紛争、人種差別など、民族という「見えざる壁」が我々を引き裂いています。現代人にとっての民族、それはいったい何なのか。

皆様も新刊『教養として知っておきたい「民族」で読み解く世界史』を通して、一緒に考えてみませんか?

著者プロフィール

宇山卓栄(うやま たくえい)

1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。大手予備校にて世界史の講師として人気を博す。現在は著作家として活動。テレビ、ラジオ、雑誌など各メディアで時事問題を歴史の視点から解説するわかりやすさには定評がある。『「三国志」からリーダーの生き方を学ぶ』(三笠書房〈知的生きかた文庫〉)、『世界一おもしろい世界史の授業』(KADOKAWA)、『日本の今の問題は、すでに{世界史}が解決している。』(学研プラス)、『世界史で学べ! 間違いだらけの民主主義』(かんき出版)、『世界史は99%、経済でつくられる』(扶桑社)など、著書多数。

日本実業出版社
2018年1月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

日本実業出版社

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