【児童書】『やくそくの「大地踏」』つちだよしはる作
[レビュアー] 服部素子
■伝統行事通じ子供の成長描く
山形県鶴岡市の黒川地区で500年の歴史を紡ぐ「黒川能」。地元の人らは能を中心に1年をおくる。中でも最も重要な神事とされるのが2月の「王祇祭(おうぎさい)」。そこで子供が舞う「大地踏(だいちふみ)」が本書のテーマだ。
その舞い手に選ばれた小学1年生のこう太は、運動が苦手で、幼稚園の発表会でも、ゆらゆら揺れるワカメしかしたことがない。そんな自分が、たくさんの人の前で、笛や鼓、太鼓に合わせ、難しい言葉の謡をうたい、舞うなんて…。
「できない」という言葉さえ、小さい声でしか言えないこう太。しかし、自分が選ばれたのは、亡くなったお父さんの願いと知り、約1カ月の厳しい練習に挑むことを決意する。
子供を担い手に受け継がれてきた日本各地の行事や祭りを絵本作家が訪ね、子供の気持ちや姿を描く創作絵本「えほん・こどものまつりシリーズ」の第15弾。作者のつちださんは山形県出身。ひとつのことを準備し、やりとげる経験がもたらすこう太の成長が、すがすがしく描かれる。(リーブル・1200円+税)
服部素子