作家・中村うさぎさんの『他者という病』の文庫化を記念し、新潮社出版部部長・中瀬ゆかりが聞き手となったトークイベントが、3月8日神楽坂のla kaguで開催された。チケットは即完売するほどの人気で、熱狂的なファンが女王の復活を祝った。
『他者という病』は3度死にかけ、仕事を失い、どん底まで落ちて考えた、自分とは何か、生きるとは何か、難病を発症した当時の思いがつづられた壮絶なドキュメントだ。あれから女王はいかにして復活を遂げたのか。長年、編集者としてうさぎさんに伴走してきた中瀬部長が、その波瀾万丈の私生活に鋭い突っ込みを入れて赤裸々に暴露。放送禁止スレスレのトークに、満員の会場は何度も爆笑の渦につつまれた。
■壮絶な入院生活
うさぎさんは2013年8月、原因不明の難病で突然倒れた。1度の心肺停止、2度の呼吸停止と、3度も生死をさまよった3ヶ月半におよんだ過酷な入院生活をこう振り返る。
「何度も死にかけると、病院も冷たいの。3回目は夫に連絡もなくて。お見舞いに来た夫が『中村さん今朝、呼吸停止してましたよ~』って言われたぐらい(笑)」と病院の対応を回想した。うさぎさんの病気はスティッフパーソン症候群ではないかと疑われたが、検査の結果から未だに断定できていないという。
■「自立」の本当の意味
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- 他者という病
- 価格:539円(税込)
けれども、うさぎさんにとって死にかけたことよりも大きなターニングポイントになったのは、体が不自由になったことだという。
退院したあとは車椅子での生活になり、一人で排泄することも難しくなった。「トイレの世話も夫に頼るようになって、人生を見る目が変わった」と語るうさぎさん。
人に頼らず生きることが「自立」だと考えていたが、そんなことは不可能だと感じたという。「自立とは、依存先を増やすこと」という熊谷晋一郎氏の言葉を引き、「誰かにちょこっとずつ甘えられることが自立なんだ、とやっとわかった」と語った。
■華麗なる依存遍歴
難病を経て気づきに至るまでの、買い物、ホスト、美容整形と、華麗なるうさぎさんの依存遍歴に話は及んだ。
若いころから自立心旺盛だったうさぎさん。誰かに頼らず生きようと仕事に邁進していたが、「自立を目指していたら、いつの間にか“孤立”していた」という。そして何かにすがるように買い物に走った。
当時のうさぎさんの家には「フェンディのマタギみたいなチョッキとか、一体誰が着るんやって服が、たくさんありましたね」と中瀬部長も振り返る。
次にハマったのはホストだった。ホストクラブ通いに同行したことのある中瀬部長が「うさぎさんが入れ込んでたホストは、顔は良かったけど本当にアホで(笑)」と暴露。すると「そうなの。三島由紀夫のこと『誰それ、タレントさん?』だって(笑)」とうさぎさんもそれを認めた。
それから美容整形にハマったのち、極めようとしたのは、なんとセックス。けれどもこの試みはいまいちうまくいかなかったそうだ。うさぎさんは「他者が必要なセックスはめんどくさい。それにオナニーのほうがずっと気持ちいいし」と、放送コードギリギリの過激発言が次々に飛び出した。
■女王もついに還暦に
うさぎさんは、先日60歳の誕生日を迎えた。「最近もまた整形したんですよね」と中瀬部長が話を振ると、うさぎさんはその出来が気に入っていないと不満を漏らした。
主治医のタカナシクリニック院長にその不満を伝えると、「もう60歳じゃん! ババアはババアらしくしてなさい!」と言い返されたという。「お前が言うな!」と苦笑しながらも2人揃って突っ込んでいた。
■祝! 大人用オムツ卒業!
顔をきれいにして服もバッチリ決めても、最近まで大人用オムツを穿いていたといううさぎさん。だが、最近うれしい変化があったという。
「オムツは蒸れるから、思い切ってパンツに戻してみたら、そんなにおしっこも漏らさなくて」と告白。すると中瀬部長が「よかったですね! お祝いしないといけませんね」と女王の還暦前のオムツばなれを心から喜んだ。するとうさぎさんが「でもさすがにTバックはもう履けない。うんこ漏らした時に本当に大変だからね(笑)」とぶっちゃける一幕もあった。
作家と編集者として信頼関係で結ばれた2人だからこその赤裸々トークは、予定時間をオーバーするほどの盛り上がりをみせた。お客さんはイベントタイトルである「女王、地獄から生還す!」を実感した様子で、トーク終了後のサイン会には長蛇の列が出来ていた。
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