芥川賞受賞作『おらおらでひとりいぐも』悲しみから立ち上がる主人公の姿に東北の復興を重ねる声

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 3月20日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、単行本 文芸書第1位は『おらおらでひとりいぐも』が獲得した。
 第2位は『青くて痛くて脆い』。第3位は『転生したらスライムだった件(12)』となった。

 1位の『おらおらでひとりいぐも』は夫に先立たれた74歳の桃子を主人公とした代158回芥川賞受賞作。悲しみに暮れる桃子の頭の中では多数の内なる声が響き渡っている。語る言葉は様々だが内なる声も桃子自身も一様に訛りのきつい東北弁だ。仙台の出版社「荒蝦夷」代表の土方正志さんは同作で使われている方言に対し、《これこそ東北語と誇らかに自らを母語に回帰させる、そんな語り》と述べる(読売新聞書評にて)。そして東北語の復権こそが東日本大震災からの地域再生の道筋になりはしないか、と考察する。
 作家の佐伯一麦さんも朝日新聞の書評で、桃子は夫の死と震災を乗り越えてきたと解説し、《大震災によって土台から崩壊した存在の家としての言葉を、地割れして露呈した地層の最古層としての東北弁を踏まえることで再建した》と読み解く。そして《本作は、個別から抜け出した相を描いた現代の民話という趣があり》と同作を評している。
 奇しくも同じ158回で直木賞を受賞した『銀河鉄道の父』も東北を舞台にした物語だ。震災から七年を経て「東北文学」に光が差してきたように、東北にも暖かい春の光が差し込むことを願わずにはいられない。
https://www.bookbang.jp/review/article/547457
https://www.bookbang.jp/review/article/545640

1位『おらおらでひとりいぐも』若竹千佐子[著](河出書房新社)

結婚を3日後に控えた24歳の秋、東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように、故郷を飛び出した桃子さん。身ひとつで上野駅に降り立ってから50年――住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚、二児の誕生と成長、そして夫の死。「この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅で、ひとり茶をすすり、ねずみの音に耳をすませるうちに、桃子さんの内から外から、声がジャズのセッションのように湧きあがる。捨てた故郷、疎遠になった息子と娘、そして亡き夫への愛。震えるような悲しみの果てに、桃子さんが辿り着いたものとは――(河出書房新社ウェブサイトより抜粋)

2位『青くて痛くて脆い』住野よる[著](KADOKAWA)

人に不用意に近づきすぎないことを信条にしていた大学1年の春、僕は秋好寿乃に出会った。空気の読めない発言を連発し、周囲から浮いていて、けれど誰よりも純粋だった彼女。秋好の理想と情熱に感化され、僕たちは二人で「モアイ」という秘密結社を結成した。それから3年。あのとき将来の夢を語り合った秋好はもういない。僕の心には、彼女がついた嘘が棘のように刺さっていた。「僕が、秋好が残した嘘を、本当に変える」それは僕にとって、世間への叛逆を意味していた――。青春の煌めきと残酷さを痛烈に描ききった、著者渾身の新境地!(KADOKAWAウェブサイトより)

3位『転生したらスライムだった件(12)』伏瀬[著](マイクロマガジン社)

順調に勢力拡大を続けるテンペストに向け、ついに『東の帝国』が動き出した。未来を知る少女“勇者クロエ”の話では、とある時間軸で、その帝国によってリムルが討たれ、テンペストが崩壊したという。今はその時とは違った運命線にいるとはいえ、可能性が消えたわけではない。警戒を強めるリムルであったが、そんな折、帝国の密偵がテンペストに潜入する――。シリーズ累計450万部突破! 大人気モンスター転生ファンタジー、最新刊が登場!(マイクロマガジン社ウェブサイトより)

4位『デスマーチからはじまる異世界狂想曲(13)』愛七ひろ[著](KADOKAWA)

5位『オリジン(上・下)』ダン・ブラウン[著]越前敏弥[訳](KADOKAWA)

6位『蜘蛛ですが、なにか?(8)』馬場翁[著](KADOKAWA)

7位『いのち』瀬戸内寂聴[著](講談社)

8位『私、能力は平均値でって言ったよね!(7)』FUNA[著]亜方逸樹[画](アース・スターエンターテイメント発行/泰文堂発売)

9位『コーヒーが冷めないうちに』川口俊和[著](サンマーク出版)

10位『銀河鉄道の父』門井慶喜[著](講談社)

〈単行本 文芸書ランキング 3月20日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2018年3月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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