【手帖】『戊辰戦争の新視点』刊行

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 戊辰戦争の始まりから150年となる今年。これまでもっぱら明治維新をめぐる政治史研究の中で扱われがちだったこの戦役について、幅広い分野の研究者18人が国際関係や軍事、民衆や宗教政策など、多様な視座から戦争自体の全体像を分析した論集『戊辰戦争の新視点』(上下巻、奈倉哲三・保谷徹・箱石大編)が吉川弘文館から発売された。各巻2200円+税。

 上巻は「世界・政治」と題し、国際法下の新旧政府の対応やフランス、ロシア、ドイツといった列強の戊辰戦争観、また新政府による旧大名らの再編などの政治、外交面を主に扱う。下巻「軍事・民衆」では、陸海それぞれの軍備、農兵の軍事動員システムや民衆の戦争関与など、戦争遂行の具体的な側面について論じる。

 たとえば下巻の「戊辰戦争期における陸軍の軍備と戦法」(淺川道夫)では、幕末の西洋兵学の流入と発展から説き起こし、ゲベール銃やスナイドル銃、有名なアームストロング後装施条砲や四斤山砲などの各種兵器の諸元や運用について、簡潔ながら要を得た密度の濃い解説を行う。軍事に関する事項は幕末史関連書を読む際に頻出でありながら、適切にまとめられている本は意外に少ない。戊辰戦争を立体的に描き出そうとする貴重な企画だ。

産経新聞
2018年3月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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