<東北の本棚>楽しさと危うさ知って
[レビュアー] 河北新報
岩手県の農家に長男として生まれ、一念発起して会社を興し、今日まで事業を継続する著者が70年余に及ぶ自らの歩みを基に人生訓をつづり、自費出版した。
5人兄弟の長男だった著者は地元の農業高校を卒業後、父の手伝いで本格的に農業を始めた。コメ余りが指摘されつつあった時代。現金収入への憧れが原動力となり、起業した高校時代の友人と共に自動車のリース業を手掛け、独立した。
重要な選択はひとつではない、失敗を考えない、人脈が利益を生む-などを「成功するための十の鉄則」として示し「成功を夢見ること、自分は独り立ちできるのではないかと予感すること」が大事と説く。
中国の故事や米国建国の歴史、旧日本軍の敗因などを引用し、情報を見定める知恵とノウハウ、信頼と信用、ハングリー精神などの大切さを訴える。
著者は1947年岩手県胆沢町(現奥州市)生まれ。水沢農高卒。73年創業。主に建設機器をリースする「セントラル」(奥州市)社長。
「若い人、起業に意欲を持たれている人(中略)に、会社をつくり、経営にあたることの楽しさとともに、薄氷を踏むかのような危うさ、その真剣さと緊張感を、どうしても知っていただきたかった」と記す。
新潮社図書編集室03(3266)7124=1620円。