2018年3月26日現地時間14時30分、イタリアで開催中のボローニャブックフェア会場にてIBBYの記者会見が行われ、2018年の国際アンデルセン賞・作家賞に「魔女の宅急便」や「小さなおばけシリーズ」の角野栄子さんが選ばれました。
「児童文学のノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞は、世界の児童図書の発展向上を目指して設立されたIBBYが主催する賞。子どもの本に長年貢献してきた作家の業績に対し2年ごとに贈られます。作家賞は、日本人では1994年にまど・みちおさん、2014年に上橋菜穂子さんが受賞。角野栄子さんは3人目の受賞となります。
IBBYから発表された、角野さんの作品についての選評をご紹介します。
日本を代表する卓越した作家、角野栄子の作品には、言いつくせないほどの魅力と思いやりと情熱がある。角野が手掛けた作品は、それがゆかいな絵本であれ、魔女のキキが活躍するすばらしいシリーズであれ、あるいはまた、第二次世界大戦中に恐ろしいトンネルの森を通り抜けて学校へ通った勇敢な少女の物語であれ、いつでも驚きと魅力に満ち、読む者に力を与えてくれる。いつでも楽しく、いつでも人生を肯定してくれるのだ。
世界中を旅してきた角野だが、その物語は深く日本に根差し、じつにさまざまな、思いもよらない人々であふれた日本という国を見せてくれる。角野の描く女性たちはひときわ自立心が強く、大胆だ。どんな困難に出会っても、忍び寄る自己不信にとらわれることなく対処法を見つけていく。人々が本の中に、自分たちを元気にして楽しませてくれるような少女や女性を求める今の時代にふさわしい作品なのである。角野の書く絵本のことばは遊び心とオノマトペにあふれている。そして物語の文章も、言うまでもなく美しく、シンプルで、とても読みやすい。(選考委員長パトリシア・アルナダのことば/JBBY翻訳のリリースより)
「(アジア人の受賞が続いたこともあって)この賞をいただけるとはまったく思っていなかったので、本当に嬉しいです。(地域性や順番などではなく)選考委員の方が作品を読んでくださっての受賞だということを感じ、なお一層嬉しく思いました。選考過程を伺うと、私が常日頃考えていることをきちんと読んでくださっているとすごく思いました。」
「私は遅い出発で、処女作は35歳のときです。若いころは書く人ではなく読む人で、戦後は外国から新しい本がはいってきてアメリカやイギリスの本を読む機会が多かったです。ちゃんと勉強したことがなかったものですから、自分にまったく自信がありませんでした。『ブラジルのノンフィクションを書いてみませんか?』と言われたときは、書けないと思ったんですが、思い出はたくさんあったのでやってみようと思いました。最初ですから書き直し書き直ししてやっているうちに、もしかしたら自分はものすごく書くことが好きなんだ、ということに気づいたんです。もし本にならなくても、一生書き続けようとその時思いました。本当に書くことが大好きなものですから、大好きなことをして、たくさんの方々にそれを読んでいただけて、世界の人々にも読んでいただけて、この賞をいただけたことは本当に大きな喜びです。」
と日本出版クラブ会館で行われた記者会見で受賞の喜びを語られた角野さん。
取材陣からとんだ質問で今後書いていきたい作品を尋ねられた時には、「おばけのアッチ・コッチ・ソッチ(小さなおばけシリーズ)が来年で40周年を迎えます。お母さんや、おばあちゃん……自分が小さい時に読んだ「おばけの話」が2世代3世代になっていきます。しあわせな作品ですよね。書き続けていこうと思っています」と小さなおばけシリーズについても語られていました。
読書が子どもたちにもたらすものは? という質問には「生き方を学ぶとかいろいろあると思いますが、まずは’ことば’だろうと思います。読んで読んで読むことで、その人の中にその人の辞書ができていく。それが積み重なって、その人の体をつくるように、その辞書ができていくと思うんです。その’ことば’はその人が生きてくうえでとても力になると思います。人と話す時に「あの人と話すとおもしろい」と言われたりするのは素敵ですよね。人を惹き付けることもできるし、自分を表現することもできます。読んで感動したら何かをやってみたくなる。読書には創造・クリエイションにつながる力があると思います。」と、とても印象的な言葉で会見を締めくくられていました。
なお、授与式は8月30日、ギリシャのアテネで開催される「第36回IBBY世界大会」で行われる予定です。
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