【写真集】『ザハ・ハディド全仕事』ザハ・ハディド著、松下希和監修
[レビュアー] 黒沢綾子
■“建築界の女王”作品集
栄誉ある米プリツカー賞を女性で初めて受賞するなど“建築界の女王”として君臨しながら、2年前に65歳の若さで急逝したザハ・ハディドの仕事を俯瞰(ふかん)できる作品集。地元・英国で刊行された原書の日本版。ザハ本人の作品解説も添えている。
抽象画のような初期のドローイングが特に面白い。斬新過ぎるアイデアはどれもお蔵入りとなり、“アンビルト(建設されない)の女王”と揶揄(やゆ)された時代もあったが、21世紀には技術の進化が彼女を後押しし、世界各地でプロジェクトが完遂されていった。
砂丘に不時着した宇宙船を思わせる独創的な建築は、アラブ首長国連邦に建設中の環境系企業の新社屋「ビーアー本社」。ザハがデザイン監修した、東京の新国立競技場の当初案をほうふつさせる。
「全仕事」だけに実現しなかった案も基本的に紹介しているが、悲しいことに、新国立競技場案は掲載されていない。(エクスナレッジ・3800円+税)
黒沢綾子