2018年本屋大賞に辻村深月さん『かがみの孤城』 4度目のノミネートで初の大賞

文学賞・賞

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 全国の書店員が「今いちばん売りたい本」を選ぶ「2018年本屋大賞」の発表会が10日、東京都内で行われ、辻村深月さんの『かがみの孤城』(ポプラ社)が受賞した。辻村さんは2014年から2016年までに3回ノミネートされており、今年ついに初の大賞となった。

 受賞作『かがみの孤城』は学校で居場所をなくした7人の中学生が鏡の中の世界で心を通い合わせていく物語。いじめを受け不登校になった中学1年生の少女・こころが、自室の鏡のなかに突然現れた奇妙な「城」で、同じような境遇にある6人の男女とともに、城の謎や願いを叶えてくれる「鍵」を探すことになる。また、本作は雑誌「ダ・ヴィンチ」の「BOOK OF THE YEAR 2017」の小説部門で1位に輝き、『このミステリーがすごい! 2018年版』でも8位にランクインしている。

 辻村さんは1980年生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年に『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞してデビュー。2011年に『ツナグ』で吉川英治文学新人賞を、2012年に『鍵のない夢を見る』で直木賞を受賞している。著書に『ぼくのメジャースプーン』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『ツナグ』『オーダーメイド殺人クラブ』『水底フェスタ』『島はぼくらと』『ハケンアニメ!』『朝が来る』『クローバーナイト』『青空と逃げる』などがある。

 女優の中江有里さんは同書について「読みすすめるうちに自分が同世代だった頃の息苦しさが蘇った。(中略)生き辛さを抱える大人にも響くはず。(中略)読後、大きな波にさらわれるような感動を覚えた」(週刊新潮・2017年8月17・24日号)と評している。
https://www.bookbang.jp/review/article/536684

 また、書評家の大矢博子さんは「物語の設定はファンタジックだが、こころが不登校になったきっかけや、他の子どもたちの事情は胸が痛むほどの現実」と同作について触れ、「なぜ集められたのがこの七人だったのか、その〈真相〉がわかったときの驚きと感動! しばらく本を手に持ったまま呆然としてしまった」(ランティエ・2017年7月号)とコメントしている。
https://www.bookbang.jp/review/article/532972

 その他、「翻訳小説部門」は、西本かおるさん翻訳のステファニー・ガーバー『カラヴァル 深紅色の少女』(キノブックス)が受賞、「発掘部門」は、折原一さんの『異人たちの館』(文藝春秋)が「超発掘本!」に輝いた。

 本屋大賞は今年で15回目。2016年12月1日~2017年11月30日に刊行された日本のオリジナル小説を対象に実施され、全国の書店で働く書店員による投票で決める。今回は全国504書店、書店員665人の一次投票により、集計の結果、以下の10作がノミネートされた。

『AX』伊坂幸太郎[著]KADOKAWA
『かがみの孤城』辻村深月[著]ポプラ社
『キラキラ共和国』小川糸[著]幻冬舎
『崩れる脳を抱きしめて』知念実希人[著]実業之日本社
『屍人荘の殺人』今村昌弘[著]東京創元社
『騙し絵の牙』塩田武士[著]KADOKAWA
『たゆたえども沈まず』原田マハ[著]幻冬舎
『盤上の向日葵』柚月裕子[著]中央公論新社
『百貨の魔法』村山早紀[著]ポプラ社
『星の子』今村夏子[著]朝日新聞出版

Book Bang編集部
2018年4月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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