結果を出すリーダーは部下を「評価」しない――チームを動かすために、まずやるべきこと

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そしてまた、中村さんは次のように指摘します。

ここで書き出したことは、よい悪いは関係なく、無意識に自分がしていることです。つまり、「誰かの好きなところ・嫌いなところ」は、すべてあなたの内面にも存在しています。

これを僕は、「自分の何かに反応します」と呼んでいます。

(44ページ)

つまり、他人に対してイライラするのは、実は自分の内面にある「見たくない自分」を見せられているからなのです。

ピンとこない人もいるかもしれませんが、家族や自分の子ども、身近な人の言動に感じるイライラを思い浮かべてみると納得できるのではないでしょうか。

思い通りに動いてくれないメンバーにイライラを感じ、リーダーは時に感情的に「反応」してしまいます。自分の内面にあるメガネに無自覚な場合、それは反射的で激しいものになりがちです。

「口ばかりで行動しないと、信頼されないよ。これはビジネスの基本だよ!」
「知らないことはきちんと知らないと言うこと。そうでないと成長できないよ!」

もちろん相手のことを思っての苦言であり正論なのですが、このような反射的な叱責は相手に伝わりにくいでしょう。「反応」には自分の「メガネ」が影響していて、相手の「ありのまま」ではないかもしれない、と考えられれば、冷静になって一度立ち止まることができるはずです。

相手を知るにはまず自分を知る。リーダーとしての最初のステップだと、中村さんは指摘します。

「保留する」ことで相手は安心して話ができる

自分のメガネを自覚できたら、次は「保留」を取り入れるといいそうです。では、何を保留するのでしょうか。

ある説によると、人は1日あたり1万~5万回の選択をしているそうです。そのほとんどは無意識に行なわれています。そしてそれらの選択は「評価判断」を伴います。人はものごとを評価し、判断して行動するからです。

仕事の現場で考えれば、チームリーダーは、メンバーの言葉や仕事への態度をほとんど無意識に評価判断していることになります。そのなかにはネガティブなものもあるでしょう。

「やっぱり、あいつの言うことはあり得ない」
「だからあいつはダメなんだ」

しかし、こうした評価判断はリーダーが一方的に下したものであって、必ずしも相手の「ありのまま」を受けとめたものではありません。先に述べた「メガネ」や「反応」と同じように、自分のものの見方による評価判断なのです。

このことに気がつかずにいると、相手の話を正しく理解できないだけでなく、相手に「この人は話を聞いてくれない」「この人に話しても無駄だ」と思われてしまい、非常に残念なコミュニケーションギャップが起こってしまいます。

これを回避するのが「保留する」ということなのです。

評価判断を横に置いて話を聴こう

中村さんは評価判断を「するな」と言っているのではありません。それは、どうしても頭に浮かぶものだからです。では、どうすればいいのでしょうか。

相手の言葉、1つひとつを受けて、評価判断が頭に浮かんできたら、そんな評価判断があることを認め、受け入れたり受け流したりするのでもなく、横に置いてください。そして、ひたすら、話に耳を傾けてください。次の話を聴いて、また評価判断が出てきたら、それも横に置き、とにかく評価判断は横に置き続けながら話を聴いていきます。
(54ページ)

急がず、焦らずに「保留」しながら聴く。こうすることで、相手は「否定されない」と安心し、思考が整理されて、間違いに気づいたり、発想を広げたりすることができます。つまり相手の自主性を引き出すことができるのです。

一生懸命なリーダーほどメンバーへの指導に熱心ですから、相手の話に評価判断をはさまずに聴き続けることに抵抗を感じるかもしれません。しかしその評価判断が、必ずしも相手のありのままの姿ではない、という考えがあれば、難しいことではないはずです。

メンバーと本当の意味で理解し合うためには、相手の言動にすぐ評価判断を下すのではなくそれを「保留」し、「いつか理解できる」という気持ちを持って話を聴くこと。それがメンバーの心を開くことにつながるのです。

 ***

チームが高いパフォーマンスを維持するには、メンバーが自律的に動かなければなりません。そのためにはメンバーをよく知り、信頼関係を築き、いつも自然体でいることのできるリーダーが求められる。現場での経験に裏打ちされた中村さんの指摘は、いままでとは違うリーダー像を提示しています。

日本実業出版社
2018年4月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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