【話題の本】『日本史のツボ』本郷和人著

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■幅広く楽しめる歴史の流れ

 日本史は暗記科目、とよく言われる。時代ごとに重要単語や年号を細切れで覚えようとするなら、なるほどそうなるだろう。

 だが、歴史には流れがある。武士はなぜ生まれ、どのように政権主体として成長していったのか。同じ法律でも、古代国家の律令と鎌倉幕府の御成敗式目ではどのような性格の違いがあるか。古代から近世に至る間に、土地所有の概念はどう変わったのか…。

 個別のテーマごとの変化をたどっていけば、無味乾燥な年表の暗記とは違う、有機的なつながりを持った流れが見えてくる。その方法論に立って、天皇、宗教、土地、軍事、地域、女性、経済という7つのテーマを通じ、古代から近世に至る日本史の“ツボ”を理解させてくれるのが本書だ。

 著者は本紙連載「日本史ナナメ読み」でおなじみの本郷和人・東大史料編纂所教授だから、品質は保証付き。1月下旬に初版1万5000部でスタートし、現在6刷8万5000部と好調だ。

 連載同様のやさしい語り口だが、「当為(建前)ではなく実情が重要」という本郷史学の基本トーンは健在。実は論争的トピックも多く、歴史に疎い人からマニアまで楽しめる。(文春新書・840円+税)

 磨井慎吾

産経新聞
2018年4月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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