【聞きたい。】片田珠美さん 『高学歴モンスター 一流大学卒の迷惑な人たち』

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【聞きたい。】片田珠美さん 『高学歴モンスター 一流大学卒の迷惑な人たち』

[文] 産経新聞社


片田珠美さん

■周囲振り回し、理不尽被害も

 「想像力の欠如が高学歴エリートに共通している。自分のふるまいが自身に跳ね返ってくることを想像できない」

 昨年、元政策秘書の男性への暴行・暴言でメディアをにぎわした豊田真由子元衆議院議員の出現が本書を書くきっかけとなった。

 「彼女は問題を起こす高学歴者の典型。特権意識の塊のようになって暴走したあげくのつまずき。こういう人について書くと一般の人も興味を持つのでは」

 片田さんは精神科医。豊田元議員について「精神的な幼児性」などと辛辣(しんらつ)に分析。「豊田元議員を小粒にしたような人はどこにでもいる。そういう人から理不尽な目にあったりして心を病み、私たちのところにくる人もいるのです」

 専門家が書くと、研究論文のようになりがちだが、本書は難解な専門用語も少なく読みやすい。カジノにはまり関連会社の大金を使った創業家の御曹司らを例に「想像力と共感の欠如」などとズバズバ斬り込む。

 タイトルの「高学歴モンスター」とは、輝かしい経歴の持ち主が傍若無人な行動で周囲を振り回すこと。しかし、高学歴が悪いわけではない。「恵まれた立場にある高学歴者は傲慢になりやすい。だから自分を振り返るまなざしを持たなければならないのです」

 本書は現代社会の流行も俎上(そじょう)に載せる。写真共有アプリ「インスタグラム」にまつわり、昨年、新語・流行語大賞を受賞した「インスタ映え」を「自己愛過剰社会の象徴」ととらえる。

 「ネット上では誰でもスポットライトを浴びることができる。インスタ映え人気は、認められたいと思う人が多い証し。30、40年前の若い男性ならクルマを買い、女性はブランドファッションにお金を使っていた。いまは若い人がお金に余裕がないからインスタグラムでアピールするしかない」

 片田さん自身はインスタグラムはやっていない。「やりたくないので」(小学館新書・780円+税)(渋沢和彦)

   ◇

【プロフィル】片田珠美

 かただ・たまみ 広島県生まれ。大阪大学医学部卒。京都大学大学院修了。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学で精神分析を学ぶ。著書に『嫉妬をとめられない人』など。

産経新聞
2018年5月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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