【手帖】『詩とファンタジー』37号発売

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 「アンパンマン」の生みの親、やなせたかしさんの責任編集で創刊し、没後も投稿詩とイラストレーションを掲載してきた『詩とファンタジー』37号(かまくら春秋社・1000円+税)が刊行された。

 今号の特集は、同誌の「10年の軌跡」。やなせさんは、30年にわたって詩人や画家に活躍の場を作った『詩とメルヘン』(サンリオ)が平成15年に休刊後、19年に同誌を創刊。発行人の伊藤玄二郎氏(74)によると、やなせさんは生前、多くの子供が自死する殺伐とした世を嘆き、必要なのは叙情の復活だと力説していたという。

 特集は、その原点を確認しようと1、2号の巻頭詩を再掲。「すべてはここからはじまった」と題し、詩や絵を再録した。その一つ、北朝鮮の国営放送、兵士の行進と自国首相をけなす日本のメディアの風潮を描写し、〈どうすりゃいいのさこの私/ところであなたは…?〉。幾多もの詩が、読み手への問いかけで結ばれている。児童書刊行で“軟”の印象が強いが、詩は硬軟を織り交ぜ、「先生は先見の明があった」と山本太平前編集長(42)は追想する。

 5年目にはやなせさんの生前追悼号をユーモアたっぷりに編んだが、東日本大震災発生で刊行延期した頃も回顧。この“幻の号”は、本当の没後の26年に刊行された。「わかれのごあいさつ」や、作家、永六輔氏(28年死去)の自筆追悼文も再録した。

 山本前編集長は「叙情とは何か。ふとした瞬間にわき上がる情感を素直に言葉にして、ありのままの自分を表現することだと先生から教わった。『ところであなたは…?』という問いに答え続けることで、叙情詩は生き続けると思う」と振り返る。

 情報コーナーでは、産経新聞朝刊1面「朝の詩(うた)」の月間賞(昨年9月~今年1月)が掲載されている。

 現在年2回刊行の同誌は今後、不定期刊の別冊号を7月から刊行予定で、投稿の受け付けはしばらく休む。(牛田久美)

   ◇

 「手帖」は今回で終了します。

産経新聞
2018年5月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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