『原子雲のかなた 新しい出会いと繋がり』 徳永徹 著
[レビュアー] 西日本新聞社
1945年8月9日、17歳の著者は長崎原爆でかけがえのない友人らを失った。しかし、戦後70年をへて彼らとの交遊などを回想した『少年たちの戦争』(岩波書店)や『曲がりくねった一本道』(作品社)を出版したことが、思わぬ出会いをもたらした。音信不通だった旧友や恩師の遺族らとの再会だけではなく、原爆禍を後世に伝えようとする若者らとの交流だ。「戦争と平和。状況は時に絶望的」という著者だが、新しい出会いが平和への「小さくはあるが、明るい“希望の光”に見える」と結んでいる。
著者は、旧制長崎中、旧制五高をへて九州大医学部卒。長く国立予防衛生研究所(現・国立感染症研究所)に勤務し所長などを歴任。その後福岡女学院院長、理事長などを務めた。