第31回三島由紀夫賞と山本周五郎賞(新潮文芸振興会主催)が16日に発表され、山本賞(または山周賞)は小川哲さん『ゲームの王国』(早川書房)が、三島賞は古谷田奈月さん「無限の玄」(「早稲田文学」増刊女性号)が受賞した。小川さんは初の候補での受賞、小谷田さんは2度目の候補で受賞となった。
山本賞を受賞した小川哲さんは、1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍中。2015年に第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を『ユートロニカのこちら側』で受賞しデビュー。
受賞作の『ゲームの王国』は、ポル・ポト独裁政権下の1975年のカンボジア、バタンバンを舞台に、サロト・サル(のちのポル・ポト)の娘・ソリヤと、貧村ロベーブレソンに生を享け、天賦の智性を持つ神童・ムイタックが、皮肉な運命と偶然に導かれ、2023年に再会するまでの経緯をスリリングに描く。今年2月に第38回日本SF大賞を受賞している。
作家の宮部みゆきさんは、《現代史の悲惨で過酷な事象を土台にしながらも、本書はきわめて上質なエンタテイメントであり、少年少女の成長小説だ。時々ユーモアさえ漂うのだから驚いてしまう。著者はただ者ではない。SF界からまた一つ超新星が現れた》(読売新聞)と評している。( https://www.bookbang.jp/review/article/541229 )
三島賞を受賞した古谷田奈月さんは、1981年千葉県生まれ。2013年に「今年の贈り物」で第25回日本ファンタジーノベル大賞を受賞。受賞作を改題した『星の民のクリスマス』でデビュー後、2016年に刊行した『リリース』が第34回織田作之助賞を受賞する。同作は第30回三島由紀夫賞の候補にもなった。その他の著書に『ジュンのための6つの小曲』『望むのは』がある。
受賞作の「無限の玄」は、作家・川上未映子さんが責任編集した「早稲田文学増刊 女性号」に掲載された一作。
三島賞・山本賞は昭和63年に創設された文学賞。三島賞は小説、評論、詩歌、戯曲を対象とし、文学の前途を拓く新鋭の作品一篇に、山本賞は主に小説を対象とし、すぐれて物語性を有する新しい文芸作品に与えられる。
候補作品は以下のとおり。
■第31回「三島由紀夫賞」候補作品(出版社・ムック)
『息子と狩猟に』服部文祥(新潮社)
『四時過ぎの船』古川真人(新潮社)
『日曜日の人々―サンデー・ピープル―』高橋弘希(講談社)
『彼の娘』飴屋法水(文藝春秋)
「無限の玄」古谷田奈月(「早稲田文学」増刊女性号)
■第31回「山本周五郎賞」候補作品(出版社)
『ライオン・ブルー』呉勝浩(KADOKAWA)
『パーマネント神喜劇』万城目学(新潮社)
『ゲームの王国(上・下)』小川哲(早川書房)
『機龍警察 狼眼殺手』月村了衛(早川書房)
『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ(文藝春秋)
関連ニュース
-
「山本周五郎賞」に湊かなえさん、「三島賞」に蓮實重彦さん 押切もえさん受賞を逃す
[文学賞・賞]
2016/05/16 -
第34回三島賞・山本賞が決定 『旅する練習』『テスカトリポカ』が受賞
[文学賞・賞](日本の小説・詩集/ミステリー・サスペンス・ハードボイルド)
2021/05/15 -
第32回山本賞に朝倉かすみさん『平場の月』、三島賞に三国美千子さん「いかれころ」
[文学賞・賞](日本の小説・詩集)
2019/05/16 -
第31回三島賞・山本賞の候補作が発表 服部文祥さん『息子と狩猟に』など
[文学賞・賞](日本の小説・詩集)
2018/04/23 -
第32回三島賞・山本賞の候補作が発表 岸政彦、金子薫、芦沢央など
[文学賞・賞](日本の小説・詩集/歴史・時代小説/ミステリー・サスペンス・ハードボイルド)
2019/04/22