『歌舞伎座の快人』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
『歌舞伎座の快人』松島奈巳著
[レビュアー] 産経新聞社
演劇ライターの著者が、歌舞伎を見始め、歌舞伎座に通い詰めた昭和末期(昭和59~63年)の回想録。副題に「1984年の團十郎、猿之助、仁左衛門、玉三郎、勘三郎」とある通り、当時、歌舞伎の枠を超えようと奮闘した中堅俳優を軸に、上演演目ごとに1話完結で焦点を当て、24話にまとめた。
当時の世相や、著者の個人的体験、非公式エピソードも盛り込み、“歌舞伎の転換期”の時代背景を伝える。物語の展開を、超訳した演目紹介が面白い。ややこしい梨園(りえん)の縁戚関係、ヒエラルキーにも言及しており、現在、活躍する歌舞伎俳優の理解にもつながる。(淡交社・1500円+税)