「今一番しっかりした教養番組」作家・天童荒太が読書バラエティ「ゴロウ・デラックス」を絶賛

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TBS「ゴロウ・デラックス」公式サイトより

 稲垣吾郎さん(44)が司会を務める読書バラエティ「ゴロウ・デラックス」(TBS系)に6日、作家の天童荒太さんが出演した。数々の感動作を生み出す天童さんが執筆にまつわる驚きのアプローチを明かした。

■今一番しっかりした教養番組

 1986年のデビュー以降、『家族狩り』(新潮社)『永遠の仔』(幻冬舎)『悼む人』(文藝春秋)など数々の話題作を世に送り出してきた天童荒太さん。人が抱える痛みに寄り添いながら社会問題をセンセーショナルに描く直木賞作家だ。天童さんがバラエティ番組に出演するのは初めてのこと。しかし天童さんは「ずっと拝見していて、バラエティというより今一番しっかりした教養番組だと思ってます」と「ゴロウ・デラックス」を絶賛。稲垣さんは貴重な出演と称賛の言葉に、「この番組に出て頂けたのは光栄」「嬉しい。ちゃんとやらないと」と喜びを表した。

■構想23年の問題作

 この日の課題図書は天童さんの最新作『ペインレス』(新潮社)。今作は“痛み”がテーマだ。爆弾テロの後遺症で痛みを感じなくなった男性と、心に痛みを感じない麻酔科医の女性。2人の濃密な関わりを描き、人間にとって痛みとは何なのかを描いた作品。作品の構想は23年に及んだという。

 天童さんは物語の始まりである22、23年前を「社会全体が自分の痛みに対してすごく敏感であるわりに、他人の痛みに対してはだんだん鈍感になる時代の始まり」と評する。そして「その痛みとは何だろう、痛みを通して社会や世界の成り立ちを見る主人公の物語にしたら新しい何かが生まれてくるのではないか」と構想の端緒となった考えを明かした。

 さらに「実際に肉体に痛みを感じない方がいらっしゃる。そこを軸に考えを進めていく中で、薬も効かないのは心の痛みではないのか、そう思った時に心に痛みを感じない人間がいたとしたら、その主人公を通してこの世界の構図はもっと何か深く、あるいは人間という存在がいったいどういうもので成立しているのか、見えていくのではないかとどんどん積み重ねていった」と考えを膨らませる過程を明かした。また「心に痛みを感じない人を積み上げてビルドアップしていく、リアリティを持つためにはどうしても時間が必要だった」と振り返った。

■稲垣吾郎興奮!

 番組では天童さんがどうしても描きたかったという性愛シーンが稲垣さんと番組アシスタントの外山惠理アナウンサーによって読み上げられた。濃密な描写を読み上げた2人に天童さんは「最高のところを朗読していただきましたね」「感激です、嬉しかったです」と喜んだ。稲垣さんは「体の中が熱くなってきました。描写が圧巻で」とはにかんでいた。

 天童さんはエロチシズムと死に関する表現こそが「表現者として真価を問われる部分」だと語る。そして「自分がもしエロティシズムに挑戦するなら世界の誰も書いていない性愛のものをチャレンジしたかった」と体と心に痛みを感じない2人の主人公たちの性愛シーンを描いた理由を明かした。

■天童作品に救われる理由

 また天童さんの創作スタイルも明かされた。天童さんは徹底的に登場人物の人物像を作り上げ、その人物になりきることで物語を描くという。「プロットを忘れても自然とその人として表現が動いていく」ところまで登場人物を作り込み、完璧になりきれるまで自分を追い込むという。番組で公開された創作ノートには主人公の生まれた日から現在までの詳細な履歴が書き込まれ、働いているクリニックの間取りや仕事のシフト、同僚たちの性格まで設定されていた。稲垣さんは「えーここまで!」とその詳細さに驚きながら、「圧倒されました。ここまでやるから重いテーマとか人の痛みとか書けるんでしょうし。それで多くの人が救われ感謝もしてくれるんだろうし……」と天童さんのアプローチに敬意を表していた。

「ゴロウ・デラックス」はTBSにて毎週木曜日深夜に放送中。次回の放送は7月12日。ゲストはお笑い芸人の山田ルイ53世さん(髭男爵)。課題図書は『一発屋芸人列伝』(新潮社)。
公式サイトでは予告動画を配信中。
http://www.tbs.co.jp/goro-dx/

Book Bang編集部
2018年7月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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