第159回芥川賞に高橋弘希さん「送り火」、直木賞に島本理生さん『ファーストラヴ』

文学賞・賞

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 第159回芥川龍之介賞、直木三十五賞の選考会が7月18日、築地・新喜楽にて行われ、芥川賞に高橋弘希さん(38)の「送り火」(文學界5月号)が、直木賞に島本理生さん(35)の『ファーストラヴ』(文藝春秋)が選ばれた。島本さんは2度目の候補で受賞、高橋さんは4度目の候補で受賞となった。参考文献の不掲載等で物議を醸した北条裕子さん(32)の「美しい顔」(群像6月号)は受賞を逃した。

 高橋弘希さんは、1979年青森県十和田市生まれ。大学卒業後、予備校の講師として働きながらバンドマンとして音楽活動を続け、2014年に「指の骨」が第46回新潮新人賞を受賞し、作家デビュー。著書に『朝顔の日』『スイミングスクール』『日曜日の人々』がある。

 受賞作の「送り火」は、両親とともに東京から青森に転居した中学3年生の男の子を主人公に、生徒数が少ない田舎の学校で巻き起こる不穏な日常を描いた作品。同学年に12名の生徒しかいない主人公たちのグループでは、花札を使った罰ゲームが横行し、次第に暴力性を帯びていく。

 直木賞を受賞した島本理生さんは、1983年東京生まれ。都立新宿山吹高等学校に在学中の2001年に「シルエット」で、第44回群像新人文学賞の優秀作を受賞し、デビュー。2003年に「リトル・バイ・リトル」で野間文芸新人賞を最年少受賞。2004年「生まれる森」、2006年「大きな熊が来る前に、おやすみ。」、2015年「夏の裁断」で芥川賞候補に。著書に『ナラタージュ』『あなたの呼吸が止まるまで』『あられもない祈り』『アンダスタンド・メイビー』などがある。

 受賞作の『ファーストラヴ』は、マスコミに大きく取り上げられたある事件を題材とした本の執筆を依頼された臨床心理士の真壁由紀が、父親を刺殺した女子大生・聖山環菜やその周辺の人々との面会を通して事件の真相に迫るミステリー小説。

 作家の朝井リョウさんは、「掴めたと思えば指の間をすり抜けるように、次々と形を変えていく登場人物たちの心。独特の緊張感が頁(ページ)を捲る手を休ませない」と同作に触れ、「緻密な表現と、複数の主題(環菜の事件、由紀の過去)の同時進行によるリーダビリティが両立している印象を受けた」(読売新聞・書評)と評している。( https://www.bookbang.jp/review/article/554699

 芥川賞・直木賞はどちらも昭和10年に制定。芥川賞は新聞・雑誌に発表された純文学短編作品が対象。主に新人作家に与えられる。直木賞は新聞・雑誌、単行本で発表された短篇および長編の大衆文学作品を対象に優秀作を選定。主に新進・中堅作家が対象。

 候補作は以下のとおり。

■第159回芥川龍之介賞(掲載誌)
「風下の朱」小谷田奈月(早稲田文学初夏号)
「送り火」高橋弘希(文學界5月号)
「美しい顔」北条裕子(群像6月号)
「しき」町屋良平(文藝夏号)
「もう『はい』としか言えない」松尾スズキ(文學界3月号)

■第159回直木三十五賞(出版社)
『未来』湊かなえ(双葉社)
『じっと手を見る』窪美澄(幻冬舎)
『破滅の王』上田早夕里(双葉社)
『傍流の記者』本城雅人(新潮社)
『宇喜多の楽土』木下昌輝(文藝春秋)
『ファーストラヴ』島本理生(文藝春秋)

Book Bang編集部
2018年7月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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