「家族の問題は家族で解決」でよいのか? 島本理生が直木賞受賞作『ファーストラヴ』で訴えたかったこと[ゴロウ・デラックス]

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TBS「ゴロウ・デラックス」公式サイトより

 稲垣吾郎さん(44)が司会を務める読書バラエティー「ゴロウ・デラックス」(TBS系)に10日、作家の島本理生さんが出演した。先日直木賞を受賞した島本さんが、受賞作『ファーストラヴ』(文藝春秋)に込めた思いを明かした。

■母になってわかった「家族」の危うさ

 ゲストの島本さんとMCの稲垣さんは旧知のなか。作家の集まるお花見の席で2人は2度会ったことがあるという。しかしお酒が大好きな島本さんは、稲垣さんが花見の席に現れたとき既にお酒に酔った状態で、稲垣さんに大胆な質問をしてしまったと告白する。普段は遠慮して聞けないような「40代の男性の恋愛について」、アイドル稲垣吾郎に質問してしまったと恐縮していた。

 この日の課題図書は第159回直木三十五賞を受賞した『ファーストラヴ』。父親を刺殺したとして逮捕された女子大生をめぐる心理ミステリー。臨床心理士の主人公が、逮捕された女子大生のノンフィクションを書くために当人や周囲の人々の話を聞くなかで、事件の裏に隠された複雑な心理が浮かび上がる。

 島本さんが今作でテーマにしたのは「家族」。以前から思春期の心の傷の問題に関心があったという。しかし「今までは娘の視点だけで書いていた」が「7年前に出産し子供を持ったことで母親の視点というものも少しずつわかるようになってきた」と語る。「そうすると親子関係の難しさがすごく身にしみるようになった。自分が子供に悪い影響を与えてないなんて、確信を持って言えない」と打ち明ける。そして「子育てとか教育って習わないのに突然本番に突入するわけですから、実はすごい難しいし危うい。その危うさだったり複雑さを小説に書いてみたいという思いが強くなった」と執筆の動機を語った。

■「家族のことは家族で解決」でよいのか?

 島本さんは執筆にあたり精神科医や臨床心理士の方に取材をするなかで、「一見お父さんとの関係に問題があるように見える子が、実はお母さんが子供を助けないことも多い」という事例を多数聞いたという。「子供をかばわずに父親の味方をしたり、どちらの味方もせずに完全に見てみないふりをする。物理的に加担しているように見えなくても、見ないふりをしていることでお母さんが子供を追い詰めてるという場合が結構ある」とわかったという。

 そして「日本は家族関係が重視される。法的にも、個人の頭の中でも。家族は大事にするもの、家族は基本的にいいもの」と日本人に染み付いた考え方を解説。しかし「家族のことは家族で解決するということが実はものすごく危ういんじゃないのか」と現実に起こっている事件を踏まえ、今作のなかで警鐘を鳴らしていることを明かした。

■「作家」のイメージ

 番組で島本さんは自身の家庭環境についても語った。子供の頃から一人でいる時間が長く、「他にやることがないからずっと本を読んでいたり、書きものしてた。それが結果的に今の仕事につながったっていうのはすごい大きいかもしれないですね」と自身を分析した。島本さんは同じような境遇や気質のおかげで作家になれた、と考える他の作家も多いのではないかと感じていたのだが、ある作家の登場でその考えを「打ち砕かれた」という。

 大学在学中にストリートダンス部に入っていた作家の朝井リョウさんをあげ、「ダンス部とかに入ってても素敵な小説が書けるんじゃん」と朝井さんの登場に衝撃を受けたと語る。ただしそれにより固定化された作家のイメージが広がり、「縛られなくて面白くなった。作家もいろんな作家がいるんだ」と朝井さんが果たした役割についても高く評価した。

 その朝井さんは島本さんの『ファーストラヴ』について読売新聞に書評を寄せており、《著者の小説を読むと、人の心は複雑な立体物なのだと痛感させられる。著者の文章は常に、心の裏側にまで届くよう、かすかな襞(ひだ)にも分け入れるよう、その先端が細く尖(とが)っていると感じる。》とこちらも島本さんの作品から鮮烈な印象を受けたことを告白している。

「ゴロウ・デラックス」はTBSにて毎週木曜日深夜0:58に放送中。次回の放送は8月16日。ゲストは廣野篤さんと筒井学さん。課題図書は『小学館の図鑑NEO イモムシとケムシ』(小学館)。公式サイトでは予告動画を配信中。
http://www.tbs.co.jp/goro-dx/

Book Bang編集部
2018年8月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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