【話題の本】『一発屋芸人列伝』山田ルイ53世著

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■生き生きした“栄光の後”

 ワイングラスを掲げ、「ルネッサーンス!」。そんな乾杯ネタで人気を得たお笑いコンビ・髭(ひげ)男爵のツッコミ担当が、一度栄光をつかんだ芸人たちの“その後”に迫る。〈一発屋の、一発屋による、一発屋へ捧(ささ)げる〉文章は、連載段階で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞に。5月刊の本書も5刷1万7000部に達した。

 読んでいて、「一発屋」という言葉につきまとう寂しさや暗さは感じない。みんな生き生きとしているのだ。“ハードゲイ”のコスプレ芸で知られたレイザーラモンHGは奇抜な衣装を脱ぎ、マイク1本で勝負に出る。「なんでだろう♪」が流行語となったジャージー姿のテツandトモは、地元ネタを巧みに仕込んだステージで今や全国で引っ張りだこ。女性芸人「キンタロー。」はモノマネだけでなく、社交ダンスや演技でも期待を集める。著者は同業者らしい鋭い観察眼と感受性で、彼らの深い部分に触れていく。

 「文章のうまさを含め、完成度が高い。よくある芸人本、という先入観を良い意味で裏切る一冊」と担当編集者。「ただの一発屋芸人の話やないかーーい!」なんてツッコミを軽くいなす、痛快な再生の記録だ。(新潮社・1300円+税)

 海老沢類

産経新聞
2018年8月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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