第17回小林秀雄賞と新潮ドキュメント賞が決定 南直哉『超越と実存』、古川勝久『北朝鮮 核の資金源』が受賞

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 第17回小林秀雄賞と新潮ドキュメント賞が本日24日に発表され、小林秀雄賞を南直哉さんの『超越と実存―「無常」をめぐる仏教史―』(新潮社)が、新潮ドキュメント賞を古川勝久さんの『北朝鮮 核の資金源―「国連捜査」秘録―』(新潮社)が受賞した。

 小林秀雄賞を受賞した『超越と実存―「無常」をめぐる仏教史―』は、ブッダから道元までの思想的変遷を「超越と実存の関係」から読み解いた一冊。「諸行無常(=すべての“実存”は無常である)」とブッダが説き始まった仏教が、インドから中国、そして日本へと伝わる過程で、「仏性」「唯識」「浄土」などの「超越的理念」と結びつき、大きく変化していった仏教史を辿る。

 同選考委員は「言語論と身体論に資するところも大きく、仏教史の枠にとどまらない弾力をもち、仏教とはこういうものかと思わせる」とコメントしているほか、新潮社発行の読書情報誌「波」では、作家の高村薫さんが《世のおおかたの宗教においてもっとも難題となる信心の問題をいかに乗り越えるかについての、鮮やかな発想の転換が本書では提示されている》と評している。( https://www.bookbang.jp/review/article/547297

 著者の南直哉さんは、曹洞宗の禅僧。1958年長野県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、大手百貨店勤務を経て、1984年に出家得度。曹洞宗・永平寺で約20年修行生活をおくり、2005年より恐山へ。現在、青森県恐山菩提寺院代(住職代理)、福井県霊泉寺住職。著書に『老師と少年』『恐山 死者のいる場所』『善の根拠』『禅僧が教える心がラクになる生き方』などがある。

 新潮ドキュメント賞を受賞した『北朝鮮 核の資金源―「国連捜査」秘録―』は、度重なる制裁を受ける北朝鮮が、核兵器やミサイルの開発を進められた背景を驚愕の実例とともに解き明かした一冊。国連安保理の最前線で捜査にあたった著者によって、北朝鮮の資金源となる犯罪ネットワークを駆使した非合法ビジネスや組織の中核で暗躍する日本人の存在などが浮かび上がる。

 キャスターの長野智子さんは、《驚いたのは、専門家パネルがこれほどまでに現場に足を運び、時に身の危険を感じるほどの捜査を行っているという事実である。実際、本書は古川氏が国連制裁決議違反事件の首謀者である北朝鮮の海運会社「オーシャン・マリタイム・マネジメント」とつながっている日本企業のオフィスに捜査をかける場面から始まる。さながらスパイ映画のようなドキドキ感だ》と本作について触れながら、《金正男氏暗殺事件など、日本人もよく知るニュースと制裁違反企業の関連など、スリリングな捜査の描写にぐいぐいと引き込まれながらも、あまりにも問題解決にほど遠い「抜け穴」の実態に暗澹たる気持ちになる》(波・書評)と評している。( https://www.bookbang.jp/review/article/544577

 著者の古川勝久さんは、1966年シンガポール生まれ。国連安保理「北朝鮮制裁委員会」専門家パネル元委員、安全保障問題専門家。1998年に米ハーバード大学ケネディ政治行政大学院(国際関係論・安全保障政策)にて修士号取得後、アメリカン・エンタープライズ研究所、米外交問題評議会、モントレー国際問題研究所などで研究員を歴任。本作が初めての単著となる。

 小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞はどちらも2002(平成14)年に創設。元は1988(昭和63)年に創設された人文科学と社会科学を対象とした新潮学芸賞から分離された賞。小林秀雄賞は、フィクション(小説・戯曲・詩歌等)以外の日本語による言語表現作品を対象とした学術賞で、自由な精神と柔軟な知性に基づいて新しい世界像を呈示した作品に与えられる。新潮ドキュメント賞は、雑誌掲載も含むノンフィクション作品を対象とした文学賞で、ジャーナリスティックな視点から現代社会と深く切り結び、その構成・表現において文学的にも良質と認められる作品に与えられる。受賞作品は、小林秀雄賞が文芸誌「新潮」とウェブマガジン「Webでも考える人」、新潮ドキュメント賞が月刊誌「新潮45」で発表される。

 昨年は、古代ギリシャにまで遡り、中動態という「失われた『態』」の姿を浮かび上がらせた國分功一郎さんの『中動態の世界』(医学書院)が小林秀雄賞を受賞。保育の最前線から、グローバル規模で進む格差と分断の実態を浮き彫りにしたブレイディみかこさんの『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)が新潮ドキュメント賞を受賞している。

Book Bang編集部
2018年8月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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