『看る力 アガワ流介護入門』
- 著者
- 阿川 佐和子 [著]/大塚 宣夫 [著]
- 出版社
- 文藝春秋
- ジャンル
- 文学/日本文学、評論、随筆、その他
- ISBN
- 9784166611720
- 発売日
- 2018/06/20
- 価格
- 858円(税込)
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【聞きたい。】大塚宣夫さん 『看る力 アガワ流介護入門』阿川佐和子共著
[文] 飯塚友子
■明るい“不良長寿”のススメ
阿川佐和子さんとの共著が2カ月で8万5千部と好調だ。従来の介護本に漂う重苦しさがなく、「不良老人になろう」などと明るくよりよい介護と老後のコツを、対談方式で指南する。
「医療は万能ではなく、75歳を超えれば効果も薄れる。だから私は病院開設当初から“生活の場”を目指した。人生の最晩年、医療より介護、介護より生活を重視するスタンスです」
高齢者向け療養型病院「慶友病院」を営む。佐和子さんの父で作家、阿川弘之さんも最晩年を東京・よみうりランド慶友病院で過ごした。本書によると弘之さんは、病室に電子レンジや鍋を持ち込み、晩酌やすき焼きを楽しんだという。
「この本の最初の項目は『好物は喉(のど)につまらない』。一般に病院食はまずくて喉を通りませんが、好きな鰻(うなぎ)やお寿司(すし)は召し上がれますよ」
今も認知症の母のケアを続け、介護経験豊富な佐和子さんの体験談や疑問を、専門家として受け止める形で進行。「施設に預けるのは親不孝ではない」などの金言が並ぶ。推奨するのは、頑張り過ぎず多くの人や専門家の手を借りる“駅伝方式”の介護だ。
「佐和子さんは悲壮感がないのが素晴らしい。お母さまに“仕事”と言ってゴルフで気分転換した話が出ますが、それでいい。全てを犠牲にして介護する人は長持ちしない。任せるところはプロに任せるべきです」
ほかに「恋は長寿の万能薬」など、型破りな指南も並ぶ。だがいずれも30年以上、高齢者医療に尽力した経験に裏打ちされている。
原点は昭和49年に見学した老人病院の惨状だ。畳敷きの部屋にお年寄りが転がされ、悪臭漂う姥棄(うばすて)山のような光景に「親を看取(みと)れる病院を」と一念発起。医療・介護スタッフを基準以上に配した東京・青梅慶友病院を開設した。自身75歳を超え、「自分が入りたい病院を」と一歩進んだ“看る力”を目指す。(文春新書・780円+税)
飯塚友子
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【プロフィル】大塚宣夫
おおつか・のぶお 昭和17年、岐阜県生まれ。慶応大学医学部卒。55年に青梅慶友病院、平成17年によみうりランド慶友病院を開設。「老人の専門医療を考える会」会長。