2022年北方領土の離島で日中露合弁会社の日本人技術者が殺された! 大沢在昌が描く怒涛の近未来ミステリー

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 9月11日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、単行本 文芸書第1位は『下町ロケット ゴースト』が獲得した。
 第2位は『コーヒーが冷めないうちに』。第3位は『すぐ死ぬんだから』となった。

 4位以下で注目は6位『漂砂の塔』。文芸誌「小説すばる」で連載されていた大沢在昌さんのミステリー巨編。大沢さんの作家生活40年目の記念碑的作品と謳われている。舞台は2022年、レアアースが採れる北方領土の離島。そこで日中露の合弁会社で働く日本人技術者の死体が見つかる。主人公は日本から送り込まれたロシア系クォーターの刑事だが、ロシア領で起こった事件に捜査権はない。日中露三カ国の曲者が集うその島で果たして主人公は誰を信じ、事件を解決に導けるのか?

 おりしも今週12日安倍首相がウラジオストクで行われた国際会議「東方経済フォーラム」でロシアのプーチン大統領ともに会見し、その場でプーチン氏から北方領土問題を棚上げしたまま平和条約の締結を迫られた。その後フォーラムではロシアの閣僚が極東地域への日本からの投資が少ないと苦言を呈し、ロシア政府が日本以外の第三国の投資も呼び込み北方領土開発を進める姿勢を鮮明にしている。流入する中国マネーは北方領土返還の障害となることはあきらかで、『漂砂の塔』で描かれた2022年の状況は絵空事ではなく、近い未来の混沌とした北方領土を鮮やかに描き出していると言えるだろう。

 そのような難しいことを考えずとも、ミステリーとしてみれば外界との行き来が制限された「孤島もの」としても楽しめる。巨匠が送る怒涛のエンターテイメントを三連休の秋の夜長に楽しんでみてはいかがだろう。

1位『下町ロケット ゴースト』池井戸潤[著](小学館)

大人気シリーズ、待望のシリーズ最新刊! 宇宙(そら)から大地へ。いま、佃製作所の新たな戦いの幕が上がる! 2015年に放映されたドラマ「下町ロケット」(TBS日曜劇場)の大ヒットも記憶に新しい、「池井戸潤、絶対の代表作」に待望のシリーズ最新刊が登場!(小学館ウェブサイトより抜粋)

2位『コーヒーが冷めないうちに』川口俊和[著](サンマーク出版)

お願いします、あの日に戻らせてください――。過去に戻れる喫茶店で起こった、心温まる4つの奇跡。とある街の、とある喫茶店のとある座席には不思議な都市伝説があったその席に座ると、望んだとおりの時間に戻れるという ただし、そこにはめんどくさい…… 非常にめんどくさいルールがあった(サンマーク出版ウェブサイトより)

3位『すぐ死ぬんだから』内館牧子[著](講談社)

78歳の忍(おし)ハナは夫岩造と東京の麻布で営んでいた酒店を息子雪男に譲り、近所で隠居生活をしている。年を取ることは退化であり、人間60代以上になったら実年齢に見られない努力をするべきだ、という信条を持つハナは美しさと若さを保っており、岩造は「ハナと結婚してよかった」が口癖の穏やかな男だ。雪男の妻由美には不満があるが、娘の苺や孫の雅彦やいづみにも囲まれて幸せな余生を過ごしているハナだったが、ある日岩造が倒れたところから、思わぬ人生の変転が待ち受けていた。人は加齢にどこまで抗えるのか。どうすれば品格のある老後を迎えられるのか。『終わった人』でサラリーマンの定年後の人生に光を当てた著者が放つ新「終活」小説!(講談社ウェブサイトより)

4位『ブロードキャスト』湊かなえ[著](KADOKAWA)

5位『ファーストラヴ』島本理生[著](文藝春秋)

6位『漂砂の塔』大沢在昌[著](集英社)

7位『生き残り錬金術師は街で静かに暮らしたい(4)』のの原兎太[著](KADOKAWA)

8位『かがみの孤城』辻村深月[著](ポプラ社)

9位『万引き家族』是枝裕和[著](宝島社)

10位『信長の原理』垣根涼介[著](KADOKAWA)

〈単行本 文芸書ランキング 9月11日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2018年9月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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