野間三賞が決定 橋本治、金子薫、乗代雄介、安東みきえが受賞

文学賞・賞

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 野間文化財団が主催する第71回野間文芸賞、第40回野間文芸新人賞、第56回野間児童文芸賞が5日に発表された。

 第71回野間文芸賞は、橋本治さんの『草薙の剣』(新潮社)が受賞。

 著者の橋本治さんは、1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説・戯曲・評論・エッセイ・古典の現代語訳・浄瑠璃などの古典芸能の新作ほか、多彩な執筆活動を行う。小林秀雄賞、柴田錬三郎賞、毎日出版文化賞などを受賞。受賞作『草薙の剣』は、62歳から12歳まで、10歳ずつ年の違う6人の男たちを主人公に、その父母や祖父母まで遡り、敗戦、高度経済成長、オイルショック、昭和の終焉、バブル崩壊、二つの大震災を生きた日本人の軌跡を辿る。戦後日本の行き着いた先である現代のありようを根底から問い直す、畢生の長篇小説。

 小説家の津村記久子さんは、「戦後の苦しみから復興を経て、外部から示される豊かさを忠実に追いながらやがて挫折し、東日本大震災後の荒地を心に刻みつけるまでの、集団としての日本人の変化が、様々な時代の登場人物の人生の一場面を通して描かれる」と本作について触れ、「日本人が見たどんな幻想が自分たちの重荷になってきたか、何を捨てるべきなのかを、改めて考え直させてくれる本であるように思う」(波・書評)と評している。( https://www.bookbang.jp/review/article/549850

 第40回野間文芸新人賞は、金子薫さんの『双子は驢馬に跨がって』(河出書房新社)と乗代雄介さんの『本物の読書家』(講談社)が受賞。

 金子薫さんは、1990年神奈川県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科仏文学専攻修士課程修了。2014年に「アルタッドに捧ぐ」で第51回文藝賞を受賞しデビュー。受賞作『双子は驢馬に跨がって』は双子の助けを待つ監禁された親子と旅と救済を宿命づけられた双子の冒険をそれぞれ描いた小説。

 乗代雄介さんは、1986年北海道生まれ。法政大学社会学部メディア社会学科卒業。2015年に「十七八より」で第58回群像新人文学賞を受賞しデビュー。受賞作『本物の読書家』は、老人ホームに向かう独り身の大叔父と川端康成を巡る秘密を描いた一作。

 第56回野間児童文芸賞は、安東みきえさんの『満月の娘たち』(講談社)が受賞した。

 安東みきえさんは、1953年山梨県生まれ。『天のシーソー』で第11回椋鳩十児童文学賞、「ふゆのひだまり」で第11回小さな童話大賞大賞を、「いただきます」で同選者賞今江祥智賞を受賞。その他、「夕暮れのマグノリア」「頭のうちどころが悪かった熊の話」など著書多数。受賞作『満月の娘たち』は、幽霊屋敷へ肝だめしをきっかけに起こった様々な出来事を通じ母と娘たちの葛藤と成長とがリアルに描いた作品。

「野間文芸賞」は、純文学の小説家・評論家に授与される文学賞。「野間文芸新人賞」は、純文学の新人に与えられる文学賞。「野間児童文芸賞」は、児童向けの文学やノンフィクションに与えられる文学賞。

Book Bang編集部
2018年11月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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