第12回舟橋聖一文学賞が19日に発表され、飯嶋和一さんの『星夜航行』(新潮社)に決まった。
受賞作『星夜航行』は、徳川家康の長男・信康の小姓として仕えた沢瀬甚五郎が、いわれのない罪によって追われ、堺、薩摩、呂宋の地を転々とした数奇な人生を描いた歴史小説。各地を渡り歩き、海商人となった甚五郎は、秀吉の朝鮮出兵によって囚われの身になりながらも、意外な形で再び祖国の地を踏むことになる。
著者の飯嶋さんは、新潮社発行のPR誌「波」(2018年7月号)に掲載されたインタビューで、「書きながら意識していたのは一九一六年に公開されたグリフィス監督のサイレント映画『イントレランス』です。(中略)この映画が暗示し、歴史上、繰り返されてきたことが、あの時代にもあって、いまなお起きているのではないでしょうか」と語り、執筆の経緯や創作の舞台裏を明かしている。(https://www.bookbang.jp/review/article/554766)
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飯嶋さんは、1952年山形県生まれ。1983年に『プロミスト・ランド』で小説現代新人賞、1988年に『汝ふたたび故郷へ帰れず』で文藝賞、2000年に『始祖鳥記』で中山義秀文学賞、2008年に『出星前夜』で大佛次郎賞、2016年に『狗賓童子の島』で司馬遼太郎賞を受賞。その他著書に『雷電本紀』『神無き月十番目の夜』『黄金旅風』がある。「飯嶋和一にハズレ作なし」と言われ、いずれの著書も高い評価を受け、熱い支持を集めている。
また、舟橋聖一顕彰青年文学賞、小中学生と高校生が対象の舟橋聖一顕彰文学奨励賞の入賞者も発表され、青年文学賞の最優秀賞に二嶋あおりさんの「雨が洗う」、佳作に須田俊輔さんの「母捨て」が選ばれた。
授賞式は、12月1日に、彦根市の彦根ビューホテルで行われる。
「舟橋聖一文学賞」は、彦根市が舟橋聖一の業績を讃え創設された文学賞。この1年間に刊行された単行本を対象に、舟橋聖一の文学の世界に通じる優れた文芸作品に与えられる。昨年は、喜怒哀楽にあふれた江戸の庶民を興趣豊かに描いた朝井まかてさんの『福袋』(講談社)が受賞。過去には北方謙三さんの『独り群せず』(第1回)、ねじめ正一さんの『商人』(第3回)、夢枕獏さんの『大江戸釣客伝』(第5回)、木下昌輝さんの『宇喜多の捨て嫁』(第9回)などが受賞している。
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