第45回大佛次郎賞が決定 角幡唯介『極夜行』が受賞

文学賞・賞

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 第45回大佛次郎賞が20日に発表され、角幡唯介さんの『極夜行』(文藝春秋)に決まった。

 受賞作『極夜行』は、太陽が昇らない冬の北極を、一頭の犬とともに命懸けで体感した80日間の記録をまとめた一冊。過酷な状況で自身が感じた恐怖、不安、飢餓感や暗闇の中で見つけた自然の美しさが表現されている。今年11月に本屋大賞とYahoo!による「ノンフィクション本大賞」を受賞している。

 登山家で作家の服部文祥さんは、「完全に人間界から隔絶された真っ暗闇の極夜に、自らを放り込んでたどり着いた著者の深い洞察は、行為と思索という確かな両輪に支えられた、科学であり、芸術であり、そして最先端の探検である」(読売新聞・書評)と評している。( https://www.bookbang.jp/review/article/548614

 著者の角幡唯介さんは、1976年北海道芦別市生まれ。早稲田大学卒、同大学探検部OB。2002年~2003年にチベット、ヤル・ツアンポー峡谷の未踏査部を単独で探検。2003年に朝日新聞社入社、2008年退社後、ネパール雪男捜索隊に参加。2009年に再び単独でツアンポーの探検に向かい、その体験をまとめた『空白の五マイル』を2010年に発表。同作は開高健ノンフィクション賞や大宅壮一ノンフィクション賞、梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞。2012年に発表した『雪男は向こうからやって来た』は新田次郎文学賞を受賞。翌年発表した『アグルーカの行方』は講談社ノンフィクション賞を受賞。2015年発表の『探検家の日々本本』は毎日出版文化賞書評賞を受賞している。

 贈賞式は、来年1月30日、東京都千代田区の帝国ホテルで行われる。

「大佛次郎賞」は、小説、ノンフィクション、歴史記述など幅広い分野で活躍した作家・大佛次郎の業績をたたえて、1973年に創設された文学賞。形式のいかんを問わず、優れた散文作品に与えられる。

 昨年は、高村薫さんの『土の記』(新潮社)が受賞。過去には梅原猛さん『水底の歌 柿本人麿論』(第1回)、司馬遼太郎さんの『韃靼疾風録』(第15回)、吉田修一さんの『悪人』(第34回)、浅田次郎さんの『帰郷』(第43回)などが受賞している。

Book Bang編集部
2018年12月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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