宝島社発行の「このミステリーがすごい!2019年版」(以下:「このミス」)が発売され、傑作小説ベスト20が発表された。
国内編で1位となったのは、私立探偵・沢崎を主人公とした原りょうさん14年ぶりの新作『それまでの明日』(早川書房)。有名金融会社の新宿支店長に料亭の女将の身辺調査を依頼された私立探偵の沢崎が、金融会社と暴力団がからむ事件に関わっていくハードボイルド探偵小説。著者の原は1946年佐賀県生まれ。1988年に私立探偵・沢崎を主人公とした『そして夜は甦る』で作家デビュー。翌年の第2作『私が殺した少女』で第102回直木賞を受賞。1990年に連作集『天使たちの探偵』を上梓し、第9回日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞を受賞。その他著書に沢崎シリーズの第3作『さらば長き眠り』、第4作『愚か者死すべし』がある。
作家の宮部みゆきさんは、本作について「みんなリアルであると同時に、現実にはない詩情を身にまとっている。この「詩情」こそが沢崎シリーズの魅力で、それを醸し出しているのが文章の力だ。硬質でありながら無機質ではなく、ウィットに富んだ比喩に溢れつつも機能的で無駄がない。私はこの文章を読みたくて沢崎シリーズを待っているのだとあらためて痛感した」(読売新聞・書評)と評している。( https://www.bookbang.jp/review/article/549012 )
また、「このミス」の海外編は、「週刊文春ミステリーベスト10<2018年>」と「本格ミステリ・ベスト10」でも1位となったアンソニー・ホロヴィッツさんの『カササギ殺人事件(上・下)』(東京創元社)が1位に選ばれている。本作は女性編集者が読む作中作のミステリ小説『カササギ殺人事件』の中で展開される名探偵アティカス・ピュントの推理が描かれ、“ある事態”をきっかけに予想外の展開となる長編ミステリ作品。アガサ・クリスティへのオマージュ作品でもある本作では、クラシカルな犯人捜しを味わうことができる上に、練り上げられたストーリー展開と張り巡らされた伏線、そして驚きの仕掛けによって、これまでにない挑戦的な作品となっている。著者のアンソニー・ホロヴィッツさんは、1955年英国ロンドン生まれの小説家・脚本家。ヤングアダルト作品『女王陛下の少年スパイ!アレックス』シリーズがベストセラーになったほか、人気テレビドラマ『刑事フォイル』『バーナビー警部』の脚本を手掛ける。2014年にはイアン・フレミング財団に依頼されたジェームズ・ボンドシリーズの新作『007 逆襲のトリガー』を執筆している。
そのほか、「このミステリーがすごい!2019年版」では、ミステリー好きを公言し、小説家デビューも果たした乃木坂46の高山一実さんのインタビューを収録。国内・海外の新作ミステリー小説の年間ランキング・ベスト20をはじめ、この30年間の「このミス」1位の中から1位を選ぶ「キング・オブ・キングス」ランキングも発表している。そのほか、平成にデビューした人気作家の対談や綾辻行人、伊坂幸太郎、辻村深月、道尾秀介、米澤穂信など59名の作家によるエッセイなどが掲載されている。
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