第160回芥川賞に上田岳弘さん、町屋良平さんW受賞、直木賞に真藤順丈さん 古市憲寿さん受賞逃す

文学賞・賞

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 第160回芥川龍之介賞、直木三十五賞の選考会が1月16日、築地・新喜楽にて行われ、芥川賞に上田岳弘さん(39)の「ニムロッド」(群像12月号)と町屋良平さん(36)の「1R1分34秒」(新潮11月号)が、直木賞に真藤順丈さん(42)の『宝島』(講談社)が選ばれた。上田さんは3度目、町屋さんは2度目、真藤さんは初候補での受賞となった。芥川賞の候補作に選ばれ、注目を集めた社会学者の古市憲寿さん(34)の『平成くん、さようなら』(文學界9月号)は受賞を逃した。

 芥川賞を受賞した「ニムロッド」は、仮想通貨をネット空間で「採掘」する中本哲史を主人公に、中絶と離婚のトラウマを抱えた田久保紀子と小説家への夢に挫折した同僚・ニムロッドとの関わりを描いた作品。

 著者の上田さんは、1979年兵庫県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、法人向けソリューションメーカーの立ち上げに参画し、現在同社で役員を務める。2013年に「太陽」で第45回新潮新人賞を受賞してデビュー。2015年に「私の恋人」で第28回三島由紀夫賞を受賞。2016年にGRANTA Best of Young Japanese Novelistsに選出。2018年には『塔と重力』で第68回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞している。

 もう一つの受賞作の「1R1分34秒」は、長年のトレーナーに見捨てられた21歳のプロボクサーが、変わり者のトレーナーと出会い成長していく姿を描いた作品。

 著者の町屋さんは、1983年生まれ。埼玉県立越ヶ谷高校卒。2016年に「青が破れる」で第53回文藝賞を受賞。同年、同作を収録した『青が破れる』でデビューする。2018年7月に刊行した青春小説『しき』は、第40回野間文芸新人賞候補作に選ばれている。

 直木賞を受賞した『宝島』は、第二次世界大戦後の沖縄を舞台にした長編小説。嘉手納空軍基地の襲撃に失敗して行方不明になった友人を追う3人の幼馴染み、グスク、レイ、ヤマコの波瀾万丈な人生を描く。2018年10月に第9回山田風太郎賞を受賞している。

 コラムニストの香山二三郎さんは、《残されたグスクたちの追跡行を物語の縦軸とすれば、横軸をなすのは、その後の彼らの生活劇であるが、著者はありがちな成長劇には止めず、そこに様々な犯罪や事件を絡ませ、ミステリーとしても読ませる》と本作に触れ、《戦後の混沌からコザ暴動を経て返還へと至る沖縄戦後史を奔放な文体で浮き彫りにしながら、逆境にめげず成長、邁進する沖縄人(ウチナンチュ)の姿を活写した超弩級エンタテインメント大作》(波・書評)と評している。( https://www.bookbang.jp/review/article/554895

 著者の真藤さんは、1977年東京都生まれ。2008年に『地図男』で第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞しデビュー。同年『庵堂三兄弟の聖職』で第15回日本ホラー小説大賞〈大賞〉、『東京ヴァンパイア・ファイナンス』で第15回電撃小説大賞〈銀賞〉、『RANK』で第3回ポプラ社小説大賞〈特別賞〉を相次いで受賞する。著書に『畦と銃』『墓頭』『七日じゃ映画は撮れません』『しるしなきもの』『夜の淵をひと廻り』などがある。

 芥川賞・直木賞はどちらも昭和10年に制定。芥川賞は新聞・雑誌に発表された純文学短編作品が対象。主に新人作家に与えられる。直木賞は新聞・雑誌、単行本で発表された短篇および長編の大衆文学作品を対象に優秀作を選定。主に新進・中堅作家が対象。

 第160回の候補作は以下のとおり。

■第160回芥川龍之介賞(文芸誌)
上田岳弘『ニムロッド』(群像12月号)
鴻池留衣『ジャップ・ン・ロール・ヒーロー』(新潮9月号)
砂川文次『戦場のレビヤタン』(文學界12月号)
高山羽根子『居た場所』(文藝冬季号)
古市憲寿『平成くん、さようなら』(文學界9月号)
町屋良平『1R1分34秒』(新潮11月号)

■第160回直木三十五賞(出版社)
今村翔吾『童の神』(角川春樹事務所)
垣根涼介『信長の原理』(KADOKAWA)
真藤順丈『宝島』(講談社)
深緑野分『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)
森見登美彦『熱帯』(文藝春秋)

Book Bang編集部
2019年1月16日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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