「紀伊國屋じんぶん大賞2019 読者と選ぶ人文書ベスト30」が発表 第1位は木庭顕『誰のために法は生まれた』

文学賞・賞

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 株式会社紀伊國屋書店が発表する「紀伊國屋じんぶん大賞2019 読者と選ぶ人文書ベスト30」を発表された。

 第9回目を迎えた「じんぶん大賞2019」は、「読者の皆さまと共に優れた人文書を紹介し、魅力ある『書店空間』を作っていきたい」との思いによって立ち上げられた人文書の賞。

 一般読者の方々からいただいたアンケートを元に、出版社、紀伊國屋書店社員による推薦を加味して事務局にて集計し、ベスト30を選定している。その中で今年の第1位に選ばれたのは、木庭顕さんの『誰のために法は生まれた』(朝日出版社)となった。

『誰のために法は生まれた』は、東京大学名誉教授で長らくローマ法を講じてきた木庭さんが、ギリシャ・ローマの戯曲や古い映画を題材として、デモクラシーが目指すものや占有の原理について中高生と語り合った5日間の記録をまとめた一冊。著者の木庭さんからは、受賞の言葉が寄せられ、紀伊國屋書店の公式サイトに無料で公開されている。

紀伊國屋じんぶん大賞2019

 また、選考委員を務めた小山大樹さんは、本作について〈中高生向けにローマ法の大家が行った特別授業。導入に用いるのは、映画『近松物語』、『自動車泥棒』に、ギリシア悲劇『アンティゴネー』など、一見法学とは関係が無さそうに見える。著者はこれらのテクストの中に「グル」や「ブロック」といった概念を挿入することで、「法は何を解体するか?」「人権は何を保証するか?」といった問いを生徒の内側に開いていく。その手腕もさることながら、極めて現代的な問題意識を持って構成された本授業は、現代の日本においても重要な意味を持つように思われる〉とコメントが寄せている。

 そのほか、第2位は倉橋耕平さんの『歴史修正主義とサブカルチャー』(青弓社)、3位は吉川浩満さんの『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』(河出書房新社)となった。ベスト30は以下の通りとなり、選考委員および読者からの推薦コメントは紀伊國屋書店全店に配布されている小冊子、または紀伊國屋書店公式サイトで公開されている。

1位 『誰のために法は生まれた』木庭顕(朝日出版社)

【選 小山大樹】
 中高生向けにローマ法の大家が行った特別授業。導入に用いるのは、映画『近松物語』、『自動車泥棒』に、ギリシア悲劇『アンティゴネー』など、一見法学とは関係が無さそうに見える。著者はこれらのテクストの中に「グル」や「ブロック」といった概念を挿入することで、「法は何を解体するか?」「人権は何を保証するか?」といった問いを生徒の内側に開いていく。その手腕もさることながら、極めて現代的な問題意識を持って構成された本授業は、現代の日本においても重要な意味を持つように思われる。

2位 『歴史修正主義とサブカルチャー』倉橋耕平(青弓社)

【選 松野享一】
 アマチュアリズム、ディベート、参加型文化。歴史修正主義の「知」の(ある意味、意外な)起源と構造を、メディア論の視座から探求し、現在の危機的状況への処方箋を模索する、興奮の一冊。2018年のみならず、ここ数年の断トツのベスト。

3位 『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』吉川浩満(河出書房新社)
4位 『新復興論』小松理虔(ゲンロン)

【選 中島宏樹】
「原発事故が起きた福島」という視点から語られてきたこの7年間、誤解に基づく感情論と、感情論ゆえの分断の加速が絶えず繰り返されてきた。その波に揺さぶられ流されゆく人々を、著者は「ふまじめな」視点から、「誤配」という迂回路を通じて結びつけていく。震災、原発、地域、食、アート、観光。将来福島について語るときに私たちが語る言葉の糧となる一書。

5位 『眼がスクリーンになるとき ゼロから読むドゥルーズ『シネマ』』福尾匠(フィルムアート社)
6位 『どもる体』伊藤亜紗(医学書院)
7位 『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』奥野克巳(亜紀書房)

8位 『未来をはじめる 「人と一緒にいること」の政治学』宇野重規(東京大学出版会)
9位 『エコラリアス 言語の忘却について』ダニエル・ヘラー=ローゼン(みすず書房)
10位 『文字と組織の世界史 新しい「比較文明史」のスケッチ』鈴木董(山川出版社)

11位 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』ユヴァル・ノア・ハラリ(河出書房新社)
12位 『評伝 小室直樹 学問と酒と猫を愛した過激な天才』村上篤直(ミネルヴァ書房)
13位 『知性は死なない 平成の鬱をこえて』與那覇潤(文藝春秋)
14位 『意味がない無意味』千葉雅也(河出書房新社)
15位 『「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義』シェリー・ケーガン(文響社)

16位 『原民喜 死と愛と孤独の肖像』梯久美子(岩波書店)
17位 『はじめての沖縄』岸政彦(新曜社)
18位 『不道徳お母さん講座 私たちはなぜ母性と自己犠牲に感動するのか』堀越英美(河出書房新社)
19位 『先史学者プラトン 紀元前一万年-五千年の神話と考古学』メアリー・セットガスト(朝日出版社)
20位 『公開性の根源 秘密政治の系譜学』大竹弘二(太田出版)
21位 『なぜ世界は存在しないのか』マルクス・ガブリエル(講談社)
22位 『制作へ 上妻世海初期論考集』上妻世海(オーバーキャスト)
23位 『トマス・アクィナス 理性と神秘』山本芳久(岩波書店)
24位 『「コミュ障」の社会学』貴戸理恵(青土社)
25位 『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子(東洋経済新報社)
26位 『超越と実存 「無常」をめぐる仏教史』南直哉(新潮社)
27位 『労働者のための漫画の描き方教室』川崎昌平(春秋社)
28位 『説教したがる男たち』レベッカ・ソルニット(左右社)
29位 『絶望する勇気 グローバル資本主義・原理主義・ポピュリズム』スラヴォイ・ジジェク(青土社)
30位 『社会制作の方法 社会は社会を創る、でもいかにして?』北田暁大(勁草書房)

Book Bang編集部
2019年3月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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