宇多丸「実人生を切り売りしてゆくタイプではない」松井玲奈の初短編小説集に驚愕[文芸書ベストセラー]

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 3月19日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、単行本 文芸書第1位は『麦本三歩の好きなもの』が獲得した。
 第2位は『デスマーチからはじまる異世界狂想曲(16)』。第3位は『ノースライト』となった。

 4位以下で注目は8位にランクインした乃木坂46の高山一実さんの著書『トラペジウム』。発売3ヶ月で20万部を突破している。アイドルを目指す女の子の10年間を描いた青春小説で、小説家の湊かなえさん、中村文則さん、羽田圭介さんらからも絶賛されている。

 一方。高山さんと同じ乃木坂46に加入していたこともある元SKE48のメンバーで、現在は女優で作家の松井玲奈さんの初短編小説集『カモフラージュ』(集英社)が4月5日に発売される。松井さんは21日のTBSラジオの番組「アフター6ジャンクション」に出演し、作品に込めた思いを語った。

 番組パーソナリティのライムスター・宇多丸さんは同書について「度肝を抜かれました」と初小説集とは思えない作品の巧妙さに驚きをあらわした。松井さんの小説は「実人生を切り売りしてゆくタイプではなく」、収録されている6つの作品が全て文体も作風も違うと解説し、「物語の発想がロジカル」「今まで読んできたいろいろな小説が描いてきた構造が血肉と化している」「ほんとに本を読んできた人なんだなというのがわかる作品だと思います」と評した。

 松井さん自身は執筆にあたり「物語が書けるか不安だった」というが、子供の頃から絵本の物語の続きを想像する遊びをしていたこともあり、それが執筆に役立ったことを明かしていた。また画家のブリューゲルの作品やホラー映画「ソウ」などからインスピレーションを受けたことを語った。待望の長編小説については「ゆくゆくですね。私は短距離走しかできないと思う。体力的な問題です。ダッシュの練習を何回もして体力をつけて長編がいつか書けたらいいな。まずは短編で繋がる連作を描けたらいいなと思う」と意欲をみせた。

 番組最後に宇多丸さんは「この調子で出していけば短編小説の名手ですよ。小説を出される芸能人はたくさんいらっしゃいますけど、このタイプはいない。物語を作るのが上手い、アイデアの膨らませ方が上手い」と松井さんの鮮やかな筆致に舌を巻いていた。

1位『麦本三歩の好きなもの』住野よる[著](幻冬舎)

『君の膵臓をたべたい』の住野よる史上いちばんキュートな主人公、登場! 「朝寝坊、チーズ蒸しパン、そして本。好きなものがたくさんあるから、毎日はきっと楽しい」図書館勤務の20代女子、麦本三歩のなにげなく愛おしい日々を描いた傑作日常小説。(幻冬舎ウェブサイトより)

2位『デスマーチからはじまる異世界狂想曲(16)』愛七ひろ[著](KADOKAWA)

クーデター軍による飛空艇襲撃事件を解決し、王都に到着したサトゥー達。早速、王都を満喫しようとする一行だったが、サトゥーの活躍を聞きつけたシガ八剣の筆頭に決闘を挑まれてしまい――!?(KADOKAWAウェブサイトより)

3位『ノースライト』横山秀夫[著](新潮社)

一級建築士の青瀬は、信濃追分に向かっていた。たっての希望で設計した新築の家。しかし、越してきたはずの家族の姿はなく、ただ一脚の古い椅子だけが浅間山を望むように残されていた。一家はどこへ消えたのか? 伝説の建築家タウトと椅子の関係は? 事務所の命運を懸けたコンペの成り行きは? 待望の新作長編ミステリー。(新潮社ウェブサイトより)

4位『すぐ死ぬんだから』内館牧子[著](講談社)

5位『宝島』真藤順丈[著](講談社)

6位『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません 第四部 貴族院の自称図書委員(6)』香月美夜[著](TOブックス)

7位『新章 神様のカルテ』夏川草介[著](小学館)

8位『トラペジウム』高山一実[著](KADOKAWA)

9位『最強の鑑定士って誰のこと?(6)満腹ごはんで異世界生活』港瀬つかさ[著](KADOKAWA)

10位『魔眼の匣の殺人』今村昌弘[著](東京創元社)

〈単行本 文芸書ランキング 3月19日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2019年3月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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