なぜ今「山崎豊子」作品が相次いで映像化されるのか

映像化

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 作家・山崎豊子が89歳で亡くなってから5年半が経った。1978年に田宮二郎主演でドラマ化して以降、何度も映像化されてきた『白い巨塔』が、昨年10月からコミック雑誌で連載が始まった。さらに、3月と5月には相次いで山崎作品がドラマ化。なぜ今「山崎豊子」なのか。人気の秘密を探った。

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 3月に「テレビ東京開局55周年特別企画」と冠して放送されるのは、『二つの祖国』。戦中戦後の日系2世の苦難を描いた作品だが、この作品も「山河燃ゆ」のタイトルで1984年、NHK大河ドラマとなっている。松本幸四郎(現・白鸚)で好評を博した主人公・天羽賢治役を今回は小栗旬が演じる。

 一方、「テレビ朝日開局60周年記念」として、5月に5夜連続放送が決まっている『白い巨塔』もリバイバル作品だ。過去には、田宮二郎(78~79年)、唐沢寿明(2003~04年)が主役の医師・財前五郎を演じたが、今回は、V6の岡田准一が財前役に挑戦する。

 それにしても『二つの祖国』は1983年刊行、『白い巨塔』に至っては完結後、実に半世紀が経っている。今になっても、山崎豊子が愛される理由は何なのか?

「白い巨塔」の船津浩一プロデューサーは、「大学病院という組織の中で繰り広げられる熾烈な権力争いと腐敗、『命の尊厳とは何か?』を問いかけ、時を経た今も、その普遍的なテーマは多くの人をひきつけてやまない重厚な社会派小説で、今日、多く制作されている医療ドラマの原点とも言える金字塔的な作品です。(中略)
 変わるもの、そして変わらないもの。両者が融合し、作り上げられる新たな『白い巨塔』は、必ずや今の視聴者に深い共感と感動を与えるものになる、と確信します」(テレビ朝日HPより)とコメント。

 主演の岡田准一も「財前五郎という人物は現代にはなかなかいないキャラクター。何かに慮っていないと生きづらい世の中にあって、財前は絶対の自信と揺るがない信念を持ち続け、野心を抱きながらギラギラとエネルギッシュに生きています。医師として、この“白い巨塔”を登っていこうとあがき、もがく男なのだと思います。『やるからには財前五郎を味わい尽くそう』という気持ちで、監督を信じてついていきたいです」(テレビ朝日の公式HPより)と意気込みを語っている。

 さらに次のように言葉を補うのは、山崎作品の映像化に関わってきたテレビ関係者だ。

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作家の山崎豊子さん。

「95年にNHKで放送されたのが、上川隆也主演の『大地の子』でした。NHK内部では、その前後に入局した局員を“大地の子世代”と呼んでいる。つまりあの作品をテレビで観て、NHKに入りたいと希望した若者たちがいた。そうした若者たちが各局にいて今では責任ある立場になり、自分の手で山崎作品を映像化したいと考えるのです。ドラマ屋になったからには、一生に一度はやってみたいと。まさに男子の本懐です」

 山崎豊子さんの担当編集者はこう語る。

「医学はこの50年でとても進歩しています。それなのに医者、医学界はまったく進歩していない。山崎先生は身体が弱く、しょっちゅう病院に入院していました。それで院内の現実の人間関係に興味をもったと話していた。『でも大学病院の腐敗を暴こうという気持ちはない。私が書きたかったのは人間ドラマ』と、生前おっしゃっていましたね」

 2019年の今、山崎豊子さんが描いた人間ドラマがどのように生まれ変わるのか、見物である。

Bookbang編集部

Book Bang編集部
2019年3月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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