2018年度から小学校で、そして2019年度からは中学校でも教科化される「道徳」。当の子どもたちはもちろん、保護者や教育関係者からも大きな関心が寄せられています。そこでポプラ社では、小中学生の子どもを持つ親が参加し、それぞれが考え、語り合うワークショップを開催。
今回のワークショップには、『答えのない道徳の問題 どう解く?』の著者の山崎博司さん・木村洋さんが登壇、そしてNHK「すくすく子育て」でコメンテーターを務める、教育学者の汐見稔幸先生をゲストに招き、大人でも答えることが難しい「答えのない道徳の問題」に頭を悩ませながらも議論を交わしました。
べんきょう、どう解く?
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- 答えのない道徳の問題どう解く?
- 価格:1,650円(税込)
<「人が嫌がることはしちゃダメ!」ってお母さんは言う。どうしてお母さんは、ボクの嫌いな勉強をおしつけてくるんだろう?>
こうした質問は、子育て世代の親にとっては、ある意味とてもなじみ深い問題だったのではないでしょうか。
「子どもにこんなことを言われたら、大人としてなんて答えればよいのか。みなさんで話し合ってください」。司会者の声かけで4人1グループとなった参加者が、さっそく意見を交わし始めます。制限時間は10分間。色とりどりのふせんに、どんどん意見が書き込まれていきました。
「知らないことを知ることはおもしろいよ」
「将来、やりたいことがやりやすくなるかも」
「ゲームなどやりたいことをやるなら、義務もはたしてね」
「嫌なことでも、やらないといけないことがあるよ。歯みがきと一緒」
「勉強は、あなたの世界を広げる楽しいもの」
それぞれのグループでどんな意見が交わされたのか、代表者による発表が行われると、同じ親として誰もが興味深そうに耳を傾けます。
けれど、ひとくちに親と言っても家庭の事情はさまざま。これから小学校に入学する子、現在まさに勉強を嫌っている子、勉強が好きだという子。すべての子どもが納得する完璧な解答はありません。各グループの発表が終わると、汐見先生は次のように述べました。
汐見:「親は頭ごなしに勉強しなさいと要求するのではなく、論理的に説明して子どもを納得させるべきでしょうね。親だからといって、無理におしつけてよいことなどありません。親と子は対等でないといけない。子どもの意見を聞いたうえで、経験豊かな大人の意見を伝えるようにしましょう。一方的におしつけられても子どもは嫌がるだけ。なるほどなあ、と思わせないと」
意見を書き込んだふせんは回収され、みんなが見られるようにボードに貼り出されました。わが子が「なるほどなあ」とうなずいてくれるような答えが見つかったでしょうか。
せいぎ、どう解く?
<今日もお母さんに怒られた。人を殴っちゃダメ、って。どうして正義のヒーローは、悪者を殴っていいんだろう?>
続けて出されたのは、こんな問い掛けでした。この問題もまた、子育て世代にとって悩ましかったようです。友だち同士やきょうだいの間に入って、けんかの仲裁をしたことは誰しも経験があるのでしょう。親として子どもにどのように答えるべきか、ふたたび意見が交わされます。
「友だちは悪者じゃないから殴っちゃだめ」
「痛くて悲しい思いを相手にさせるって、良いこと?」
「ヒーローはルールを守るために戦っている」
「あなたは自身が殴られたらどう思う?」
「ヒーローも、本当は殴っちゃだめなんだよ」
「そもそも正義ってなんだろう。立場によって正義は異なるのでは?」。そんなふうに議論が広がるグループがあれば、「テレビ番組であろうとヒーローも暴力を使うべきではない。どのような問題も話し合いで解決すべきだ」と矛先を番組制作者に向けるグループも。
どうやら議論する人の組み合わせで、話の方向は大きく変わっていくようです。この問題について、汐見先生はこのように述べました。
汐見:「4、5歳くらいになると、悪いことをしてみたいという気持ちが子どもにも芽生え始めます。そのとき子どもの心の中では、いいことをしたいという気持ちと悪いことをしてみたいという気持ちがたたかっているんですね。読み聞かせてもらった昔話などを通じて、いいことをしたほうがよいと子どもたちは知っています。ヒーロー番組で正義の味方が暴力をふるっていても、子どもたちはちゃんと道徳心を理解しています。親御さんは安心を」
おうちで、どう解く?
この日、大人たちがワークショップでおこなったように、子どもたちも道徳の授業でクラスメイトと議論を交わします。それだけではありません。教科化されるということは、国語や算数と同様に個別評価されるということです。
ただし先生方は、子どもたちが考えた意見の善し悪しを評価するわけではありません。評価のポイントの一つとして挙げられるのは、相手の意見に耳を傾け、自分の意見を論理的に伝えられるかどうか。
言わば、コミュニケーション力が問われるのです。その力を養うために、家庭でできることがあると汐見先生は言います。
汐見:「今日はなにがおもしろかった? 学校でどんな勉強をしたの? そんなふうに、普段の生活でどんどん子どもに問い掛けることが大切です。そして子どもの話にじっくり耳を傾け、4回に1はなるほどねと共感してやりましょう。おすすめは4打数1安打のコミュニケーション、すなわち『KKKH』ですね。野球ではK=三振、H=安打を意味しますが、ここでは、K=きく、K=きょうかんする、K=(どうしたらいいか一緒に)かんがえる、そしてH=はげます、としています。子どもの言うことを否定したり、また親の考えを一方的におしつけたりせず、4打数1安打のコミュニケーションを増やしてください。そうすれば、子どもの中で自ら考える力が育ち、自分の思いを言葉にできるようになるでしょう」
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●どう解く?特設サイトはこちら
https://www.poplar.co.jp/pr/doutoku/
山崎博司・木村洋・二澤平治人
広告代理店で働く、コピーライター・アートディレクターのクリエイター3人。それぞれ子育て中のパパでもあることから、これから育っていく子どもに「考える力」をつけてほしいと、『答えのない道徳の問題 どう解く?』を企画、執筆した。
汐見稔幸(教育学者・東京大学名誉教授)
専門は教育学、教育人間学、育児学。日本保育学会会長。『小学生 学力を伸ばす 生きる力を育てる』『本当は怖い小学一年生』『「天才」は学校で育たない』など著書多数。NHK「すくすく子育て」でもコメンテーターをつとめ、子育て世帯の心強い味方として絶大な支持を得ている。
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