「第一印象がいい営業」が意外に信用されない理由――お客様は営業の何を見ているのか

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photo by polkadot/Adobe Stock

この春から営業部門に配属され、やりがいと同時に戸惑いも感じているビジネスパーソンも多いことでしょう。モノやサービスが簡単に売れる時代ではありませんから、プレッシャーに思うのも当然です。

そんな皆さんに向けて、営業コンサルタントで、ベストセラー「絶対達成シリーズ」や『この1冊ですべてできる 営業の基本』の著者である横山信弘さんから、営業パーソンがまずおさえておくべき「いい印象の与え方」について解説してもらいました。

(本稿は同書第4章「営業のスキル」の一部を抜粋、再編集したものです)

第一印象より大事なこと

Q. 営業に配属されましたが、初対面の人が苦手です。第一印象だけでもよくしたいのですが、どうすればいいのでしょう?

A. 印象は「習慣の集積」によって決まります。

営業は「第一印象」が大切です。身だしなみや表情、姿勢、明瞭でわかりやすい話し方など、第一印象をよくするために心がけることはたくさんあります。

 しかし、大切だとはいっても、「第一印象ですべてが決まる」わけではありません。第一印象をよく見せられなかったからといって、今後の相手との関係を悲観する必要はありません。なぜなら、人に与える「印象」には、第一印象以外にも、「第二印象」と「第三印象」があるからです。

第一印象

相手を「はじめて」見た瞬間に、相手の見た目などの視覚情報や、声の大きさや明るさといった聴覚情報から受ける印象のこと。

第二印象

少しの時間、接触をしてから抱く相手への印象のこと。就職活動の「面接」などで重要視される項目。会話の内容や受け答えの際のしぐさなど、コミュニケーションをとおして判断される。

「パッと見はいいんだけど、話しはじめたら全然ダメだった。自己中心的な印象を受けた」

「最初は暗い感じの印象を受けたけれど、コミュニケーションをとってみると、冷静で、かつ論理的な受け答えができる。判断能力に優れている印象を受けた」

このように、「最初は○○○○という印象だったけれど、すぐに別の印象を感じた」と第一印象とのギャップによってつくられる印象。

第三印象

長期にわたる行動と結果で判断される印象のこと。第一印象、第二印象が「点の情報」だとしたら、第三印象は「線の情報」。日ごろから正しい行動をとっているか。愚痴をこぼさず、不安や不満を口にせず、淡々と組織に貢献する行動ができるか。お客様の要望にスピーディーに応じることができるか。こうした行動習慣によって形づくられる印象。

お客様の心に残るのは?

言葉が与える印象よりも、「行動習慣」が与える印象のほうが、お客様の心に残ります。そのため、お客様の信頼を得るには、「何をいうか」以上に、「何をするか」「何を続けるか」が大切です。

信頼がないところで、いくら巧みなセールストークを駆使しようとしても、お客様の心を動かすことはできません。では、どうすれば信頼関係が築けるのでしょうか。それは、愚直に、実直に、継続的に、お客様との接点を持ち、役立つ情報を提供し続けることです。

どの印象においても共通していえるのは、「印象=習慣の集積」ということです。普段から身だしなみに気を使わない人が、本番だけきちんとしようとしても、着こなしが様になっていないのがにじみ出てしまいます。

ネクタイがゆるんでいたり、しわくちゃのシャツを着ていたりしたら、「たまたまその日だけだろう」とは誰も思いません。それと同じで、その場だけ「いい人」を演じたり、取り繕おうとしたりしても、相手には見透かされてしまいます。

お客様は、いい習慣を持っている営業に信頼を寄せます。カバンや時計、ボールペンは買えばそろえられますが、セットした髪、きれいな爪、まっすぐなネクタイ、シワのないシャツは、いい習慣がないと準備ができないのです。

もっとも大事な第一印象

お客様との信頼関係を盤石にするために、もっとも意識すべきなのは第三印象です。第一印象と第二印象もいいに越したことはありませんが、それらがよくても第三印象が悪い場合、ギャップが大きくなり、相手を失望させます。

「身だしなみもきちんとしていたし、商談時の受け答えもしっかしていたけれど、いざ仕事を依頼してみると、やるべきことを全然やらない」といったマイナスの評価をされてしまいます。そして、「やるべきことを全然やらない営業」「やることが遅い営業」といった不名誉なレッテルを貼られてしまうのです。

反対に、第一印象と第二印象が悪くても、第三印象がよければ、いくらでも挽回することができます。

「最初に会ったときはとても地味な印象を受けたけれど、実際は違った。意外と努力しているし、愚痴もこぼさずコツコツ継続してスピーディーに対応してくれる営業だ」

このように「好印象」を与えることができます。不器用な人ほど地道ながんばりが評価されたときにギャップが働き、第三印象がよくなります。

理想はすべての印象をよくすることです。しかし、もっとも大事なのは、第三印象なのです。

言葉だけではコミュニケーションできない

Q. 「もっと表情豊かにお客様に接しようよ」といわれます。笑顔でいればいいというものでもないと思うのですが……。

A. 表情を意識した「非言語コミュニケーション」は大事です。

コミュニケーションには、言葉を使う「言語コミュニケーション」と、言葉以外の伝達手段を用いた「非言語コミュニケーション」があります。

言語コミュニケーション……話す言葉の内容、手話、筆談など。抽象的・論理的表現に優れている。

非言語コミュニケーション……身振り、手振り、表情、声のトーン、見た目、印象など。対人関係において、感情、態度、パーソナリティなどの情報を伝達する際には、言語コミュニケーションより、非言語コミュニケーションのほうが多くの情報を与えることができる。

福岡県に、博多明太子を販売する「ふくや」という会社があります。福岡県内に多くの店舗を持っているのですが、同社が行なっている顧客アンケートで、とても興味深い結果が出ています。それは、お客様に店員の「接客態度」に加え、「商品の味はどうだったのか」「値段は適正か」というアンケートでした。

その結果は、「店員の接客態度がいい」と答えた人は、ほぼ100%「味もよく、価格は適正」とも回答し、「価格が高い」という回答をしたお客様は1人もいなかったということです。ところが、「店員の接客態度がよくない」と答えた人の大多数が、「味がよくない、価格が高い」と回答したそうです。商品はまったく一緒なのに、店員の接客態度によって味が変わってしまう、価格に対する印象が変わってしまうというのです。

これを受けて、同社は徹底的に社員教育をして業績を上げていきました。接客態度をよくすることで、お客様の満足度を上げていき、結果として売上も上がっていったという素晴らしい事例です。

接客態度というのは、まさに非言語コミュニケーションの集積です。お客様が質問したいときに、「店員同士でしゃべっている」「やる気がなさそう」「挨拶に元気がない」ではいけません。明るく、健康的で、何でも聞いてくださいといった、気持ちのいい接客が大事です。

この非言語コミュニケーションは、表情、姿勢、語調、声のリズム、行動の量とスピードなど、多岐にわたります。このなかで、もっともインパクトが大きいのが、「表情」です。営業として、戦略的に表情を切り替えられるスキルをまず身につけましょう。

表情で気持ちを伝える

コミュニケーションとしての表情は、大きく次の3種類に分けられます。

オープンフェイス……笑っている表情、心を開いて微笑んでいる表情。緊張感を緩め、周囲にリラックス感を与える。

ニュートラルフェイス……「素」の表情。何も意識せずにいるときの表情であり、周囲に対して影響を与えにくい。

クローズドフェイス……真剣な表情、厳しい表情。周囲に緊張感を与える。

表情を意識した非言語コミュニケーションでは、「オープンフェイス」「ニュートラルフェイス」「クローズドフェイス」を局面に応じて使い分けていく必要があります。

日本人(東洋人)は、西欧人に比べると表情に乏しいため、かなり意識して表情をつくらないと、「表情の変化」を相手に伝えることはできません。

私は営業コンサルタントとして、私が営業や販売スタッフに「話し方」の研修をする際には、「どのように表情をつくればいいか」をシチュエーションごとに解説しています。

[シチュエーション 1] お客様との単純接触・製品説明・商談
オープンフェイスで対応。柔らかい笑顔でリラックス感を与える。

[シチュエーション 2] お客様への(比較的強い)クロージング
クローズドフェイスで対応。製品説明を「オープンフェイス」でしているので、真剣な表情に変化したときに「ギャップ」が生まれ、相手にインパクトを与えられる。

[シチュエーション 3] お客様からお断りされたとき
ニュートラルフェイスで対応。残念な結果になっても、苦々しい表情(クローズドフェイス)を見せない。

[シチュエーション 4] お客様から注文をもらったとき
とびっきりの「オープンフェイス」で対応する。微笑みではなく、大きな喜びを表現する。

営業とお客様との「心の摩擦値」を取り除くためには、まずは柔らかいオープンフェイスで接し続けます。そして「ここぞ!」というときにクローズドフェイスで押していきましょう。摩擦抵抗がなくなってから背中を押すことが重要です。

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著者プロフィール

横山信弘(よこやま のぶひろ)

株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。企業の現場に入り、目標を絶対達成させる営業コンサルタント。営業支援先は、NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで。3大メガバンク、野村證券などでも研修実績がある。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。『日経ビジネス』『東洋経済』『PRESIDENT』など、各種ビジネス誌への寄稿、多数のメディアでの取材経験がある。ベストセラー『絶対達成シリーズ』の著者であり、メルマガ「草創花伝」は4万人の経営者、管理者が購読している。コラムニストとしても人気で、日経ビジネスオンライン、Yahoo ! ニュースのコラムは年間2000万以上のPVを記録する。著書に『絶対達成する部下の育て方』『絶対達成マインドのつくり方』(以上、ダイヤモンド社)、『最強の経営を実現する「予材管理」のすべて』(日本実業出版社)、『空気で人を動かす』(フォレスト出版)などがあり、その多くが中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されており、現地でも人気が高い。

日本実業出版社
2019年4月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

日本実業出版社

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