必要な知識や情報を「調べ」、それをもとに「書く」「話す」という「知的生産力」は、重要なビジネススキルのひとつです。しかし、漫然と知識や情報を集めているだけでは身につかないし、有効なアウトプットをすることもできません。ではどうすれば、必要な知識や情報を確実に自分のものとできるのでしょう。また、限られた時間のなかで能率的に知的生産を行うには、どうしたらいいのでしょうか。ここではSB新書『調べる技術 書く技術』より、知の巨人・佐藤優氏が、情報整理や能率アップのために実践している「ノート術」を紹介します。
「手書き」スキルは「教養力」の必須スキル
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- 調べる技術 書く技術
- 価格:880円(税込)
想定外の出来事に直面した際、自分の力で考え、適切に処理する力。佐藤氏は、これを本当の「教養力」と定義しています。そして教養力とは、質の高いインプットと質の高いアウトプットが揃ってこそ磨かれるとしています。
インプットとは、日々、流れてくる情報や知識に触れることを指すのではなく、その取り組み方次第では、想像力や洞察力、判断力、分析力などをすべて含めた「人としての能力」を向上させることができるのです。
現代はインプットがあふれている時代。そのなかで流れていくに任せず、本当に必要な知識、情報を身につけ、「教養力」の土台をつくっていくための必須スキル、それが「手書き」スキルです。
今は、クラウドサービスの普及なども手伝って、情報の管理や整理にデジタルツールを使う人が増えています。佐藤氏も、名刺や原稿の管理にはDropboxを使っているそうですが、読書ノートやスケジュール、今日やるべき仕事のリスト、日誌、電話のメモ、執筆アイデアなど、情報整理の基本はすべて「手書き」といいます。
すべての情報は手書きで一冊にまとめる
基本は「手書き」。しかも「一冊のノート」にまとめているというのが佐藤氏の情報整理術です。愛用しているのはコクヨの分厚いキャンパスノート。そこに読書ノートをはじめとした情報がズラリと整理されていますが、これにはいくつかポイントがあります。
まず読書ノートは「本の抜き書き」と「それに対する自分のコメント」を書くこと。すると、ただ読んだだけでは「わかったつもり」でわかっていなかった内容がしっかり残り、しかるべきときに引き出し、アウトプットにつなげられます。
また、毎日つける日誌には、「振り返ることで時間効率が上がる」「記憶のトリガーになる」という2つのメリットがあるといいます。今日あったこと、今日会った人、そこで話したこと……これらの情報から、「この時間の使い方は非効率的だったな」と振り返って改善したり、今日聞いた情報が後日、より深く必要になったときに「そうだ、この人に聞いたんだった」と思い出し、さらなる情報収集につなげたりできるわけです。
ちなみに、デジタルツールを多用しない理由について、佐藤氏は、あまりにも手軽に保存できてしまうデジタルツールは、ともすれば「情報のゴミ箱」になる危険があるからと指摘しています。
たしかに、「後で読もう」と軽い気持ちで保存しておいたウェブ記事が、ほとんど読まれないまま溜まっているという人は多いのではないでしょうか。読書ノートを作成するにしても、パソコンだとつい調子よく大量にメモをとってしまい、内容の選別も記憶への定着も不完全なままになる可能性があります。
読んだら、「手書き」で記録する。このように情報整理を「手書き」に集約することには、おのずと「本当に必要な情報」だけが蓄積されていくというメリットもあるのです。
スケジュール管理は、ノートと手帳を併用する
スケジュール管理にも、佐藤氏ならではの「手書き」のポイントがあります。
まず、ノートに加えて、手帳にも予定を記します。というと単なる二度手間にも思えますが、違いは、「予定が変更になったとき」に現れます。たとえば予定がキャンセルになったときは、ノートからは予定を消さず、手帳上だけで消すのです。
なぜこうした使い方をしているのかというと、変更前の予定をノートに残しておくと、あとから「この日は誰々と会う予定だったけど、キャンセルになった」という情報を参照できるからだといいます。一方、手帳を見れば、変更前の予定と混同せず、生きている予定だけを素早く確認できます。だから、スケジュール管理はノートと手帳の併用がいいのです。
ビジネスパーソンでも、この管理法なら「あの日、あの人と話すはずだったこと」が為されないまま過ぎてしまうといったことを避けられるでしょう。
また、ノートに記すスケジュールは、ひと月あたり見開きで使い、左ページには原稿の締め切り、右ページにはアポの予定を2~3ヶ月先まで入れているそうです。こうしておいて、左ページを見ながらアポを入れていけば、締め切りを守るべく執筆に集中する日と、人と会う日を、うまく切り分けられるといいます。直近だけでなく、先を見据えた時間管理も可能になります。
プレゼンの準備や企画書の作成など、デスクワークに集中しなくてはいけないタイミングは、どんなビジネスパーソンにもあるものです。この使い方を取り入れれば、仕事の予定を「オフィスで集中する日」「外部の人と打ち合わせする日」という具合に長い目で管理でき、時間効率の大幅アップも叶うでしょう。
――佐藤優氏といえば、現代日本屈指の知の巨人ですが、本書に挙げられている技法は、誰にでも取り入れられるものばかり。これからの時代を、たくましく生き抜く知的スキルを身につけたい人は、「佐藤式ノート術」を取り入れてみては。
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