カレーがとびきり美味しくなるスパイスの使い方 「セブンルール」「dancyu」で注目されたカレーメソッド

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スパイスでおいしくなる and CURRY のカレーレッスン

『スパイスでおいしくなる and CURRY のカレーレッスン』

著者
阿部由希奈 [著]
出版社
立東舎
ISBN
9784845633746
発売日
2019/05/24
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

スパイスでおいしくなる! マンネリな一皿を“ごちそう”に変える5つのカレーレッスン

[レビュアー] 古川諭香(ライター)


インド・ゴア地方の酸っぱ辛い豚肉のポークビンダルーカレー

 突然ですが、普段あなたの家の食卓に並ぶカレーにはどんな食材が入っていますか。おそらく、大半の人はじゃがいもやニンジン、豚肉などが入った王道なカレーが頭に浮かぶはず。しかし、カレーは食材とスパイスの組み合わせを工夫すれば、無限の楽しみ方ができる料理です。

〈どんな食材も受け入れてくれる懐の深い食べもの、それがカレーです。〉

 そう力説する阿部由希奈さんが手がけた『スパイスでおいしくなる and CURRY のカレーレッスン』(立東舎)には、私たちの概念を覆すカレーレシピがたっぷりと掲載されています。

 2018年7月に「Kitchen and CURRY」(東京・新代田)を開設した阿部さんは日本全国で様々なイベントやお店とコラボレートし、“流しのカレー屋”として個性豊かなカレーを提供中。そんな阿部さんが作る「and CURRY」流カレーはスパイスを存分に活かし、意外な食材が組み合わせられているのが特徴。本書ではスパイスを楽しめるオリジナルカレーレシピを、レッスン1~5に分けて記載。使用するスパイスの量はレッスン1~5で徐々に増えていきますが、作り方の難易度は変わりません。

 インドカレーやスリランカカレーとはまた違った、無国籍で自由な「and CURRY」流カレーは、日本の旬の野菜を存分に堪能できるよう工夫されています。ワンパターンなカレーやレトルトカレーにマンネリを感じた時こそ、本書を開き、新しいカレーとの出会いにわくわくしてみませんか。

「ホールスパイス」と「パウダースパイス」でカレーをアレンジ

 本書のレシピには、「ホールスパイス」と「パウダースパイス」という2種類のスパイスが使われているのが特徴。おいしいオリジナルカレーは、それぞれのスパイスの異なる特性が合わさることで完成するのです。

 レッドチリやシナモンスティックといった「ホールスパイス」は、例えるなら長距離ランナーのような存在。控えめですが、持続性の高い香りが楽しめます。対して、ブラックペッパーやターメリックのような「パウダースパイス」は短距離ランナー。一気に立ち込める華やかな香りは時間が立つと儚く消えていきます。

 2種類のスパイスはこのように異なる演出をしてくれるからこそ、どちらも取り入れると、食欲をかきたてる極うまカレーが完成するのです。

「キウイ×豚スペアリブ」で作る“ごちそうカレー”

 カレーは老若男女から親しまれている料理だからこそ、大切な人の誕生日や記念日に食卓に並ぶことも多いはず。そんな特別な日には、目で見て楽しめるユニークなカレーを作ってみるのもよさそうです。

 意外な食材に舌鼓を打てる「キウイとスペアリブのカレー」は、フルーツの華やかさが楽しめるごちそうメニュー。

 豪快に食べられるので、男性もお腹いっぱいになれるはず。こちらは見た目に反し、やや辛めなお味となっているので、バテがちな夏にも食べやすい一品です。

 なお、カレーだけでなく普段のご飯づくりでもスパイスを活用してもらえるよう、本書では本の巻頭グラビアで使い方のアイディアを紹介しています。スパイスはカレーだけでなく、いつもの和食献立のおいしさも引き立ててくれるオールラウンダー。

 例えば、いつもの炊飯には「クミンシード」を投入。梅じそのような香りの「クミンシード」を入れると、炊きたてのご飯からよりよい香りが立ち上るようになります。

 また、かぼちゃの煮つけにはシナモンスティックを加えるのもおすすめ。生のかぼちゃとシナモンスティックを一緒に煮立てれば甘い香りがキッチンに広がり、食欲がかきたてられます。

 スパイスは取り入れるのが難しそうに感じられるかもしれませんが、実は手軽に取り入れられ、普段の料理を格上げしてくれる救世主。組み合わせ次第で無限のオリジナリティーを表現できるため、自分らしい一品を作る手助けをしてくれます。

 斬新で独創的な阿部さんのカレーレシピは、食をもっと自由に楽しむことの大切さも教えてくれるはず。本書が少し油にまみれ、スパイスのニオイが染みこんできた頃には、きっとあなたも自分だけのオリジナルカレーが楽しめるようになっているでしょう。

撮影:寺澤太郎/スタイリング:藤田真理/イラスト:oyasmur

立東舎
2019年6月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

立東舎

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