デキる人は自分流の「質問」を磨くこと意識する――「話す」と「聞く」との間には、必ず「質問」がある

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質問する時の「呼びかけ」が地雷に!?

―松本さんが質問をするときに気をつけていることは何ですか?

細かいことなのですが、相手に呼びかけるときの“敬称”には注意しています。たとえば、お医者さんを前にしたセミナーでは、必ず呼びかけに「○○先生」とつけます。「〇〇さん」が普通じゃないかと思われるかもしれませんが、意外とこうした細かいことが大きな地雷になる可能性があります。他にも、「お父様」「奥様」「お兄さん」「お姉さん」……など、年齢による微妙な使い分けも気をつけています。

呼びかけから、質問が始まっているともいえます。だから質問の形だけちゃんとすればいいと思っていると、最初の段階でつまづいてしまうかもしれません。ちょっとしたことですが、気を配るといいですね。

―「やってはいけない質問」はありますか?

基本的に誰にでも、プライドがあると思うんですよ。立場やメンツですね。そうしたことを考えると、やってはいけない質問の代表はやはり「○○って知っていますか?」と聞くことです。知らない場合に「何ですかそれは? 知りません」とはなかなかいいづらいですし、知らないとはいえない立場の人もいます。中には自分を試しているのかと悪くとらえる人もいるでしょう。まさに「地雷を踏む」質問だといえます。

「聞いたことがあると思いますが」とか「ご存知かもしれませんが」と濁すならいいのですが、そのものを知っていますかと聞くのはデリカシーに欠ける人だと判断されてしまうので気をつけた方がいいですね。

―この人は質問が上手い! と思う方はいますか?

そうですね……、以前、古舘伊知郎さんが司会のテレビに出演させていただいたことがあります。テレビだと台本があって、大体その通りに進めていくのですが、古舘さんは「それって○○ということですか?」などと突然台本にない質問をしてくる。司会者として、その人の知識やアドリブ力を引き出したり、時には感情を揺さぶる質問をして本人の素を出させる質問力には脱帽しました。本当にお上手でしたね。

また、古舘さんとは違ったやり方で質問が上手いなと思うのは、阿川佐和子さんです。トーク番組でゲストの方とお話ししているのを拝見していると、どちらかというと「話を聞く」ということを大切にされていて、相手のテンポに合わせた質問をされるのが上手だと感じました。

「あなたのお話を聞いたうえで、こういう質問をしますよ」と相手を安心させながら、答える準備の時間をきちんと与えていますよね。相手が落ち着いて答えやすい雰囲気作りをすることで、引き出せる答えもあるはずです。

自分流の質問で、コミュニケーションを楽しむのが大事

―初対面との方との質問の仕方でポイントはありますか?

初対面の場合、本題の以外の質問で会話がスムーズになることが多いです。もちろん、横道にそれすぎては駄目ですが、本題以外の話題を準備して、質問してみるといいかもしれません。

といっても、刑事のように「ご出身はどちらですか?」「学校は?」「趣味は?」とプライベートな内容を矢継ぎ早の尋問調で質問するのはNGです。コミュニケーションは自然さが一番です。自分の情報も出しつつ、その時に気になったことを素直に聞いてみると、結構、話がはずんだりするものです。

真面目な人ほど、質問を特別なものだと考え過ぎてしまうため、かえって何もできなくなってしまいがちです。でも、相手から何かを引き出そうと考えるのではなく、まずは会話を楽しむぐらいの気持ちでいいんです。「今日、開花宣言が出ましたね」「昨日まで、出張だったそうで大変でしたね」などと、相手が「はい」か「いいえ」で答えられる「同意の質問」から入っていけば、相手も身構えず答えてくれるでしょう。

初対面の場合は、お互いに緊張していますし、見栄もあって賢くみせようとして難しいコメントや質問をしようとしがちです。けれどもまずは、緊張をほぐすための質問でウォームアップをしてみてはいかがでしょう。

―著著の『仕事のできる人が絶対やらない質問の仕方』の中では、他にも色々な「質問の仕方」が紹介されていますが、とくに読者の方に伝えたいことは何でしょうか?

そうですね……。最初にも少しお話ししたように、その時だけやろうとおもっても上手な質問の仕方をすることはできません。普段から質問をするくせをつけておく必要があります。また、質問の先には相手が必ずいますから、この人にここでこの質問をするのは適切なのかということを、質問する前に少し立ち止まって考えてみること。そうした練習の1つとして、この本を参考にしてもらえると嬉しいです。

本を読んで、この質問の仕方がいいな、使ってみたいなというものがあれば、ぜひ実際に声に出して使ってみてください。読者の皆さんが、自分の仕事やプライベートに合わせて実践していく中で、自分流の質問を生み出して、コミュニケーションを楽しむ助けとしてくだされば幸いです。

 ***

松本幸夫(まつもと ゆきお)

ヒューマンラーニング株式会社代表取締役。スピーチドクター。学生時代から強度のアガリ症で悩み、克服のために話し方教室から、武道・ヨガなどあらゆる分野に挑み心の強化をはかる。やがて、話法を駆使すれば人生が好転するという信念のもとに、企業内研修講師を始め、同時期にビジネス書作家としてデビュー。作家と講師の二刀流で今年で33年になる。話し方・中でも質問話法には定評があり、ラジオ・テレビでも活躍。多い年には年間200回の企業研修を行う。話法研究のために、落語やプレゼンテーション、映画。舞台や演劇など幅広い分野で研究を重ねている。話法に関する著書も多く、実際に研修の中で用いてみて、効果のあった質問技法を紹介している。

著書に『人を動かす聞く力&質問力』(三笠書房)、 『人は話し方が9割』(アスコム)、『アガリ症を7日間で克服する本』(同文舘)、『感じがいいと言われる人の話し方』(日本実業出版社)などがある。

日本実業出版社
2019年6月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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