【児童書】『エーミールと探偵たち』エーリヒ・ケストナー作、池田香代子訳

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

エーミールと探偵たち

『エーミールと探偵たち』

著者
エーリヒ・ケストナー [著]/ヴァルター・トリアー [イラスト]/池田香代子 [訳]
出版社
岩波書店
ISBN
9784001140187
発売日
2000/06/16
価格
704円(税込)

【児童書】『エーミールと探偵たち』エーリヒ・ケストナー作、池田香代子訳

[レビュアー] 産経新聞社

■昔、夢中で読んだ本と再会

 もう半世紀くらい前、小学校の図書室でこの本を夢中で読んだ記憶がある。それを先日、久しぶりに手に取った。

 場所は、作家の生まれ故郷、ドイツ・ドレスデンにあるケストナー博物館。記帳を見ると、日本人客のなんと多いことか。世界各国で翻訳されているが、日本語に訳された本を、約1時間かけて読み直した。

 エーミール少年はベルリンのおばあさんのもとに列車に揺られて向かう間に、同席した山高帽の男にお金を盗まれてしまう。途中で気づいて男を追う間にわんぱく大将と知り合い、仲間たちと協力して男を追い詰めたエーミールは、機転をきかせて男を警察に突き出し、ちょっとしたヒーローになるというお話だ。

 世の中、善人ばかりじゃない、とか、持つべきものは仲間だとか、さまざまな教訓が詰まっている本。なにより、ヴァルター・トリアーが手がける挿絵が、ちょっと昔の古いヨーロッパ映画を見るような粋な感じを伝えてくれる。(岩波少年文庫・640円+税)

 正木利和

産経新聞
2019年7月7日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク