第161回芥川賞、直木賞が発表 芥川賞に今村夏子さん、直木賞に大島真寿美さん

文学賞・賞

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 第161回芥川龍之介賞、直木三十五賞の選考会が7月17日、築地・新喜楽にて行われ、芥川賞に今村夏子さん(39)の「むらさきのスカートの女」(「小説トリッパー」2019年春号)が、直木賞には大島真寿美さん(56)の『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』(文藝春秋)が選ばれた。2年連続の候補となり、注目を集めた社会学者の古市憲寿さん(34)の「百の夜は跳ねて」(「新潮」2019年6月号)は受賞を逃した。

 芥川賞を受賞した「むらさきのスカートの女」は、近所に住む“むらさきのスカートを穿いた女性”と友達になるために行動する主人公のわたしを描く。「むらさきのスカートの女」に接触を試みるわたしの滑稽さや不穏な空気を持ち合わせた作品となっている。

 著者の今村さんは、1980年生まれ。2010年に「あたらしい娘」で第26回太宰治賞を受賞し、デビュー。本書を改題した『こちらあみ子』で第24回三島由紀夫賞を受賞している。2016年には文学ムック「たべるのがおそい」に発表した「あひる」が第155回芥川賞候補に、2017年には第5回河合隼雄物語賞を受賞。2017年に発表した『星の子』は、第157回芥川賞候補となり注目を集めた。

 直木賞を受賞した『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』は、著者が初めて時代小説に挑戦した作品。「妹背山婦女庭訓」や「本朝廿四孝」などを生んだ人形浄瑠璃作者、近松半二の生涯を描き、「物語はどこから生まれてくるのか」という長年のテーマが、義太夫の如き「語り」にのって、見事に結晶した長編小説だ。

 書評家の豊崎由美さんは、《浄瑠璃作者として生き抜いた男の生涯を、虚実混淆の渦の中に描き、読んで無類に面白い小説になっている》と本作に触れ、《物語はどこからやってくるのか、さまざまな人間の思いや感情が渾然となった“渦”から言葉を引きずり出してくるのが作者と呼ばれる者なのかといった、創作論にもなっていて深い。大島真寿美のもとにも、いつか、ふいに近松半二が降りてきたのだろう。そう思えるほど、この小説の中の半二は生きている。これは大島にとっての「妹背山婦女庭訓」にちがいない。代表作と呼べる素晴らしい作品にちがいない。》(中日新聞 東京新聞・書評)と評している。( https://www.bookbang.jp/review/article/567183

 著者の大島さんは、1962年愛知県生れ。1992年に「春の手品師」で文學界新人賞を受賞しデビュー。著書に『チョコリエッタ』『虹色天気雨』『ピエタ』『あなたの本当の人生は』『モモコとうさぎ』など多数。

 芥川賞・直木賞はどちらも昭和10年に制定。芥川賞は新聞・雑誌に発表された純文学短編作品が対象。主に新人作家に与えられる。直木賞は新聞・雑誌、単行本で発表された短篇および長編の大衆文学作品を対象に優秀作を選定。主に新進・中堅作家が対象。

 第161回の候補作は以下のとおり。

■第161回芥川龍之介賞(文芸誌)
今村夏子「むらさきのスカートの女」(「小説トリッパー」2019年春号)
高山羽根子「カム・ギャザー・ラウンド・ピープル」(「すばる」2019年5月号)
古市憲寿「百の夜は跳ねて」(「新潮」2019年6月号)
古川真人「ラッコの家」(「文學界」2019年1月号)
李琴峰「五つ数えれば三日月が」(「文學界」2019年6月号)

■第161回直木三十五賞(出版社)
朝倉かすみ『平場の月』(光文社)
大島真寿美『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』(文藝春秋)
窪美澄『トリニティ』(新潮社)
沢田瞳子『落花』(中央公論新社)
原田マハ『美しき愚かものたちのタブロー』(文藝春秋)
柚木麻子『マジカルグランマ』(朝日新聞出版)

Book Bang編集部
2019年7月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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