「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」が「本の雑誌」(2019年8月特大号)にて発表された。ベスト10の内容は2019年5月末までに刊行されたエンターテインメント作品が対象となっている。
第1位に選ばれたのは『半落ち』『クライマーズ・ハイ』『64』などの著者・横山秀夫さんのミステリ小説『ノースライト』。「あなた自身が住みたい家を建てて下さい」と依頼され、柔らかな北の光が差し込む「Y邸」を設計した建築士の青瀬だったが、依頼主の家族はなぜか新居に住んでいなかった。家の中に残されていたのは電話機と、ドイツの建築家、ブルーノ・タウトの作品と思しき一脚の椅子だけ……幸せそうに見えた家族はどこに消えてしまったのか? 青瀬はタウトの椅子を手がかりに失踪の謎を追うが、同時にコンペを巡る疑惑に巻き込まれていくミステリー小説だ。
本作は、横山作品のミステリー史上、最も美しい「謎」とされ、新潮社発行の月刊誌「ENGINE」(2019年8月号)に掲載された横山秀夫さんのインタビューによると、雑誌で連載した作品だったが、不本意な出来栄えだったため、6年かけて全面改稿し、その結果、連載時の文章は1割も残っていないことが明かされている。( https://www.bookbang.jp/review/article/575440 )
また、香山二三郎さんや郷原宏さんなど多くの書評家が「新境地」「比類なく美しい」と絶賛しており、中でも文芸評論家の池上冬樹さんは《横山文学は円熟味をましてきて、再読・再々読したくなるような深みをもつ。ひたひたと押し寄せるラストの温かな感動は、横山文学の中でも随一だろう》と高く評価。横山さんの代名詞である警察小説ではないが、生き方の是非を問いかける大きなドラマが展開される構造的は全く同じだと解説しながら、《むしろタウト探究の話をいれたことで、芸術家小説としての側面も加わり濃密になっている》(波・書評)と評している。( https://www.bookbang.jp/review/article/564267 )
そのほか、べスト10には瀬尾まいこ『傑作はまだ』やドリアン助川『新宿の猫』、西條奈加『隠居すごろく』などがランクイン。「本の雑誌 2019年8月特大号」では、ゴーストライターに迫った特集を掲載。ノーベル賞作家から江戸川乱歩に某アイドルなど、ゴーストライター説の謎に迫るほか、驚きの代作事情から、ゴーストライターの歓びと哀しみ座談会、そしてゴーストの帝王・重松清さんのインタビューを掲載している。
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