木嶋佳苗、座間9人殺害事件の犯人が住んでいた間取りの不思議な共通点 事故物件芸人とイヤミス作家が語る、ヤバい部屋

対談・鼎談

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お引っ越し

『お引っ越し』

著者
真梨, 幸子
出版社
KADOKAWA
ISBN
9784041061657
価格
616円(税込)

書籍情報:openBD

事故物件怪談 恐い間取り

『事故物件怪談 恐い間取り』

著者
松原タニシ [著]
出版社
二見書房
ISBN
9784576180977
発売日
2018/06/26
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

【恐怖の事故物件対談】真梨幸子×松原タニシ 怪奇は部屋に現れる

[文] 新潮社


真梨幸子さん(左)と松原タニシさん(右)

「病院の跡地に建ったマンション」「高級タワマンの壁一面がぶつぶつ」――住み始めた物件で不思議な体験をしたイヤミス作家・真梨幸子さん。そして事故物件に住んでいるピン芸人・松原タニシさんが、実際に体験した現象や殺人犯が住んでいた部屋について語った。

 ***

■呪いの人形みゆきちゃん

真梨幸子(以下:真梨) 去年の秋ごろでしょうか。タニシさんと、ご著書の『事故物件怪談 恐い間取り』のことがツイッターに流れてきて。早速読んだら止まらなくなって、会う人会う人に宣伝しまくりました。

松原タニシ(以下:松原) わー、光栄です。

真梨 結構この手の本は読んでいるんですけど、この本は素晴らしい。こういう本って意外と中身がスカスカというか、ネットのコピペかよって思うこともあるんですけど、この本は、名前は伏せてあるとはいえ実在の物件や実際に起こった事件について詳しく書いてあるでしょう。むしろ勉強になる。

松原 勉強に……そんな、恐縮です。

真梨 文章も非常に読みやすいし、写真も豊富だし。私は電子書籍で読んでいたんですが、クリックすると突然スキンヘッドのおじさんが出てきて、夜中、本当に声が出ました。

松原 知人が住んでる事故物件を訪ねてきた、全然知らんおっさんですよね。写真はいろいろ撮っていて、スマホの中に5万枚ぐらい入っています。

真梨 タニシさんが事務所から持って帰ってきた人形、みゆきちゃんの話も怖かった。そうだ、今日おみやげがありまして。昨日巣鴨で買ってきた赤いパンツなんですけど……。

松原 ちっちゃ! めっちゃかわいらしいですね。

真梨 これはみゆきちゃん用です。タニシさんに近づく女性に嫉妬するんでしょう?

松原 そうですね、そう言われてますけど……(注・タニシさんがみゆきちゃんと共に番組収録に臨んだところ、共演者の女性の部屋に黒い影が飛ぶ、手首に謎の傷跡ができるなどの現象が起こった)。

真梨 私も祟られたら嫌だなって思って(笑)。赤という色には魔除けの意味もあるし、運もついてくるんですって。あ、でも、魔除けになって、何も来なくなったら困りますよね。お仕事的に。

松原 でも赤い色って何か寄せ付けやすいって言いますね。気の狂った人の部屋は赤くなるとか。

真梨 きっと、使いようなんですね、赤って色は。

■夜に赤ちゃんの泣き声が


真梨さんがプレゼントした赤いパンツ

松原 この本、タイトルに「間取り」って入っているので不動産とかインテリアのコーナーに置かれていることも多いんです。

真梨 幸せそうな本の中にこの本がぽつりと置かれてるんですね(笑)。私も間取りとか不動産、それから事故物件も大好き。水商売の人、私達小説家もそうですけど─事故物件に住むと運がつくので、昔の芸人さんなんかは、ちょっと変なうわさのあるところにわざと住んでみるなんてことをしてたらしいんです。タニシさんはそれを体現されているなと思って。

松原 わかります。僕が事故物件に住みはじめたのは2012年の冬でしたが、それまではまったく芸人としては芽が出なかった。今も僕から事故物件を取ったら何も残りません(笑)。

真梨 最初、怖くなかったですか。

松原 怖かったです。事故物件に住むまで、霊的な体験をしたことがなかったので。

真梨 最初に住んだマンションがいきなりハードなところですもんね(殺人事件の現場になったマンション。写真に謎の物体が写り込む、マンションの前でひき逃げに遭うなどの出来事があった)。

松原 繁華街の近くなのに、十畳のワンルームで4万5千円っていう破格の家賃でした。あそこはいろいろありました。でも、慣れました。

真梨 私、作家になる前の会社員時代、郊外のマンションを買ったんですよ。新築だから事故物件であるはずがないんだけど、不思議なことがちょくちょく起こる。まずエアコンを取り付けにきた業者さんが、入るなり黙ってしまって。

松原 うわー、気になる。

真梨 逃げるように帰っていったんです。そして夜になると、まず赤ちゃんの泣き声がする。まあ赤ちゃんの夜泣きはしょうがないと思ってたら、そのうち明け方に奇声が聞こえだして、マンションの掲示板にも「夜中に騒がないで」というような張り紙が貼られて。金縛りには遭うし、人生初の心霊写真を撮ってしまうし、極めつきは泊まりに来た友人たちが皆「あなた夜中に突然起き出してたけど、どうしたの?」って言うんです。もちろんまったく記憶がなく、自分が夢遊病なのかなと思っていたところ、たまたまインターネットの掲示板で住んでいるところを調べたら、そのマンションが病院跡地に建っていたことがわかって。

松原 じゃあ、部屋じゃないんですね。丸ごと一棟、そういうことが起こる。

真梨 そう。今日、これは言っておかなきゃと思ってたんですけど、事故物件は、部屋のせいじゃないんです。土地なんですよ、結局。

松原 僕も土地には何かがあると思います。最初に住んだところも川を暗渠にした跡があったり、何かを鎮めているであろうお地蔵さんがあったりとか、場所そのものがまずい感じがある。

真梨 ……ただ、私はそのマンションに住んでいるときに小説家デビューしまして。

松原 あ、じゃあ結果としてはよかったんですね。

真梨 そうなんです。小説家ってやっぱりいかがわしい商売なんだって思いました。

松原 僕も「事故物件住みます芸人」として仕事させてもらってるのは、事故物件があるおかげで。もう本当、事故物件とそこで亡くなった方には感謝しかないですね。

構成:編集部 撮影:平野光良(新潮社写真部)

新潮社 小説新潮
2019年8月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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