成功するために、努力をやめる。欲望の精度を上げる「エゴリスト」
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
努力するのはすばらしいこと。
しかし自分の望みを叶えた成功者たちは、努力したから理想の人生を手に入れられたわけではない。彼らは、自分の意思で行動を起こしているだけのこと。
そう断言しているのは、『努力をやめるノート』(ジョイ石井 著、フォレスト出版)の著者です。
そして目標を達成するための重要な武器が、本書で紹介されている「努力をやめるノート」だというのです。
「努力をやめるノート」を書くことで、ムダな努力を直ちにやめて、一度きりのあなたの人生をもっと有意義に、最大限の自分を使って、望むものをすべて手に入れて生きられるということです。
意図に反してあなたの潜在能力のブレーキとなっていた「努力」をやめることと、あなたの本当に求められているものを明確にすることで、さらに潜在能力を活性化させられるからです。(「はじめに」より)
「努力をやめるノート」は、著者の25年のカウンセリング経験に基づき、より効果が上がるように体系化、メソッド化されているそうです。
ベースになっているのは、「イメージング」というライフメソッド。潜在能力を使って、幸せな人生をどう築いていくための手段だといいます。
そして、このノートを「エゴリスト」と呼んでいるそう。それはどのようなものなのか、第3章「エゴリストの基本ルール」を確認してみましょう。
ノートの初歩的ルール
著者によれば、「エゴリスト」は本当の自分に気づくための「イメージングノート」の核。その願望のイメージをどんどんふくらませ、それに対する情熱の熱量を上げていくノートなのだそうです。
毎日書き続けることで、それまで頭で考えていた「こうあるべき」という義務的な願望や、本音だと思い込んでいた偽りの願望が自然淘汰されていくというのです。
そして自分の心によぎる欲求と毎日向き合い続けていくことにより、本当の意味で情熱を注ぐことができる願望の精度を上げていくことができるわけです。
なお、あくまでも欲求のイメージをふくらませていくためのノートなので、書き方は自由。制限などは一切ないそう。が、まったく自由だということになると、かえって難しく感じてしまうかもしれません。
そこで著者は、あえていくつかの初歩的なルールを設定しています。
ただし本来は制限なしの「エゴリスト」なのですから、以下でご紹介するルールはいつ解除してもいいそうです。(92ページより)
書き間違え、誤字脱字は気にしなくていい
書き間違えたとしても、修正などは一切する必要はなし。
誤字脱字などを気にして書くものではなく、心によぎる自分の本音を、瞬間的につかみ取って書き出していけばいいということです。
ですから、ときには自動書記のように、自分で書いている感覚を超越して、すごい速さでペンが動いてしまうというようなことが起きてもOK。
もちろん、どんな筆記用具で書いてもかまわないものの、著者は万年筆で書くことを勧めています。なぜなら、ちょっとした気持ちの変化が筆圧の変化となってペン先に伝わり、微妙な太さや字体に表れるから。
そのとき心によぎる本音に反応した文字が、「エゴリスト」に書き残されていくということ。普通、記録そのものは残せたとしても、「自分がそのときなにを求めていたか」という感情を記録しておくことは困難です。
しかし「エゴリスト」を万年筆で書いていくと、自分の本音を自体や筆圧、表現を通じて残していけるわけです。
消したり、書き直したり、うまく書けないからと、ページごと破り捨てたりはしないでください。 上手に書こうという意識が、あなたの本音を見えづらくしてしまいます。
「エゴリスト」は、あなたが、あなたのために、あなたの本音をつかむために書いていくノートです。誰かに見せたり、見られたりすることを前提に書こうとすると、本音が心をよぎりづらくなってしまいます。
書いてみて、読み返してみて、少し恥ずかしくなるくらいのほうが、うまくいっていると思ってください。(94~45ページより)
なにしろ自分の本音の欲求を書き出しているのですから、「もしも『エゴリスト』をどこかに落としてしまったら、恥ずかしくて名乗り出られない」と感じてしまうくらいが理想的だといいます。(93ページより)
所有、動詞、存在がキーワード
「エゴリスト」には最初のとっかかりとして、わかりやすく3つの問いかけでアプローチするそうです。
まずは、「What do I want?(私は何を欲している?)」という見出しを「エゴリスト」のページの中央に書いてください。 その大きな問いの下に、「have」「do」「be」というそれぞれの問いかけのキーワードを書きます。
「have」は、所有を表しています。「何を手に入れたいか?」です。 「do」は、動詞の代表。「何をしたいか?」です。「be」は、存在そのものを表しています。つまり、どうありたいか?」です。
この3つの大きな問いかけを、毎朝「エゴリスト」を開いては自分に「問いかけましょう。(99ページより)
つまり、「自分はなにが欲しいんだろう?」「なにをしたいと思っているんだろう?」「どんな自分になれたらいいのだろう?」と自問するということ。
ちなみに著者が使用している「エゴリスト」の質問バリエーションは、次のようなものだといいます。
「自分がいいなと想うライフスタイルってどんなだろう?」 「自分の行きたい場所は、どこかあるかな?」「これくらいあったらいいだろうな、と思える目標収入額ってどのくらいだろう?」 (思わず多ければ多いほどいい! と答えたくなりますが、数字をただ大きくするよりも、どの辺りの数字が一番ワクワクするかを見つけてください)
「自由な時間をどう過ごしているとワクワクするだろうか?」 「一緒に働くなら、どんな人たちとが毎日楽しく、やりがいも感じられるだろう?」 「いくつになっても健康であるのは当然だけど、その健康な自分で何をしよう?」 「いつも満たされた精神状態って、どんなだろう?」 「幸せな自分は、どんなところに住んでいるだろう?」 「自分の家族はそれぞれどんなふうに幸せだろう?」 「どんな生き方を自分のものとしているだろう?」 (100~101ページより)
大切なのは、書いてみて“少しでもワクワクするかどうか”。
願望が叶うから「エゴリスト」を書くというよりは、「書いていて楽しいから毎日書いている」と思える人のほうが、潜在能力が活性化するというのです。
毎日書き続けるには、それ自体を楽しむことがいちばん。楽しんでいる限り、努力は必要ないということです。(99ページより)
「エゴリスト」を書くということは、すなわち自分を見つめなおすこと。そう考えると、著者が勧めるメソッドの有効性も理解できるのではないでしょうか?
少なくとも、手間がかからない以上は試してみる価値がありそうです。
Photo: 印南敦史
Source: フォレスト出版