昔話の女の子たちと「友達の友達くらいの気持ちになっちゃう」エッセイ第2弾

レビュー

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日本のヤバい女の子 [2]

『日本のヤバい女の子 [2]』

著者
はらだ, 有彩
出版社
柏書房
ISBN
9784760151509
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

同情せずにはいられない? 理不尽な目にあう昔話の女の子たち

[レビュアー] 西田藍(アイドル/ライター)

 昔話の女の子たちと語り合うエッセイ集の第二弾のテーマは「静かなる抵抗」で、静かだけどヤバい女の子がたくさん出てくる。なんか忘れがちだけど、女の子って存在も、そしてヤバい女の子も昔からいたんだって思うだけでなんか嬉しくって、ウチらじゃん、みたいな、いやぜんぜんウチらじゃないかもしれないけど、まあまあ似てるじゃんね。

 昔話に出てくる女の子は普通じゃないことが多くって(普通だと物語にならないよね)、それで普通じゃないことで理不尽な目にあったりして結構可哀想で、でも実はちゃんといろんな形で「抵抗」しているじゃん、っていう、日本神話から今昔物語から各地の伝説から集めたそんな二十の物語を、現代的に紹介している。

 その中で私が好きな女の子は紅葉(もみじ)伝説の鬼女・紅葉。美しく聡明な彼女が妖術を使い、恋した男の正妻を呪うことにしたのをきっかけに悪行を重ね、どんどん鬼になって最後は討伐される。この伝説にはバージョンがいろいろあって、めちゃくちゃ悪行を重ねたり、実はいい人説もあったりするんだけど、鬼になる前の半生に同情しちゃって悲しい。著者は彼女に寄り添ったり物語を分析したりして、ついでに私も、そうだよねって紅葉の友達の友達くらいの気持ちになっちゃう。

 すげえと思うのは絵姿女房(えすがたにょうぼう)で、美しさと聡明さを上手に使って富も男もゲットしちゃって、それってハッピーエンドでうまいことやったじゃん、で終わりそうだけど、著者はもっと深いとこついてくる。生活には時間の厚みがあって、そこに隠れている部分に「生きる」があるから。

 ねえ、みんな友達になれたらよかったのにね。いや実際は気が合わなかったりして大嫌いになるかもしれないけどさ。昔々の女の子が頑張ったり怒ったり耐えたりキレたりしてんの見ると、妙に元気になっちゃうよ。

新潮社 週刊新潮
2019年9月12日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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