『奇跡の朗読教室』
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<東北の本棚>人に喜び届けて笑顔に
[レビュアー] 河北新報
「朗読って、そんなに人をわくわくさせるものなの?」。東日本大震災をきっかけに東京都内で朗読教室を開いた著者が、朗読で人生が変わった人々の姿をつづった。誰もが気軽に始められるのが朗読の良さ。表現手段を得て、人に喜びを届けるようになった人々の笑顔に、読者の顔も思わずほころぶ。
コンプレックスを抱えた女性が朗読講座で自信を取り戻し、コミュニティー放送のパーソナリティーになって明るく活躍する。「仕事の鬼」で通っていた男性営業マンは、群読でチームワークの大切さに気付く。社内で「人が変わった」と言われるようになった。
母が入る特別養護老人ホームを訪れた娘。気性が激しい母を子どもの頃から怖がってきたが、「ごんぎつね」の朗読に母が涙を流し、親子の心をつないだ。
人の心を動かす朗読とは、美しい声で上手に読むことより、「作品に込めた作者の思いをキャッチしたいという姿勢で向き合うこと」。ナレーターを長年務める著者のモットーだ。
著者は南相馬市出身、尚絅女学院短大(現尚絅学院大)卒。東日本大震災後に「何も役立てない」と肩を落としたが、「声を通して人々を元気づけたい」と、2012年に「ソフィアの森朗読塾」を開講した。
新泉社03(3815)1662=1728円。